光の勇者ログツィーノ
篝みづほ
第一章
第1話 プロローグ ー 光の勇者
「さぁ…終わりにしようか」
薄れていく霧の中、黄金の光をまとった青年が、右手に持った剣を肩に担いでゆっくりと前に出る。その声は低く響き、まるで空気そのものが震えたように感じられた。
街の中には、青年よりもはるかに大きな黒い霧のような魔物たちが渦巻いている。鋭い爪を持ち、歪んだ目で光を睨みつける。しかし――青年の放つ圧倒的なオーラに飲み込まれたように、彼らは一瞬ひるんだ。
一匹の魔物が吠え声とともに跳びかかる。その鋭い爪が空を裂き、青年の首元を狙った――だが、青年の剣から放たれた光の刃が空気を切り裂くようにとびかかる。
次の瞬間、魔物の体は黄金の光に包まれ、かき消されていった。
戦場が静寂に包まれたその刹那――青年が低く呟く。
「これが自由の代償か」
彼の瞳に宿るのは、達成感ではなく虚無だった。
彼の一言をきっかけに、周囲の魔物たちが一斉に襲いかかった。数体の叫びが入り混じり、地面を踏み鳴らす音がどんどん近づいてくる。だが、青年は眉一つ動かさない。鋭い目を細め、剣を軽く振り払うように動かした。
眩しい光があたり一面を覆う。光の刃がまるで生き物のように魔物たちを追い、次々と闇を打ち砕いていく。そのたびに、空気が震え、地面が揺れた。魔物の咆哮(ほうこう)は次第に悲鳴に変わり、ついには音すらかき消される。
少女と少年は、その光景を前にして立ち尽くしていた。黄金の光があまりに眩しく、目を開けてさえいられない。少女は思わず口を押さえ、小さく声を漏らした。
「…これが…勇者様の力なの…?」
隣の少年は何も答えない。ただ、全身を震わせながらその光景を見つめていた。その目には、恐怖と尊敬が入り混じった感情が浮かんでいる。
青年は剣を肩から下ろし、ゆっくりと魔物たちを見渡した。まだわずかに動く闇の影を確認すると、静かに一言つぶやいた。
「面倒だ…いっきに終わらせる!」
剣を大きく振り上げた瞬間、光が爆発するように広がり、街中を覆った。眩しすぎる光と衝撃に、少女と少年は思わず目を閉じた。
闇が完全に消える、一瞬――誰もが息を呑んで、その行く末を見守っていた。
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