第3話 隕石落下
茨※県東部を襲った大地震の原因は巨大な隕石だった。
事前の警告、撃ち落とし計画など準備は万端だったものの、隕石が進路変更をしたことで気が緩んでしまったのか、再度、不自然な軌道の変化で隕石は地球に落下。
咄嗟の機転で巨大隕石は予定通りに上空で破壊されたのだが、小さくはない破片となって日本に降り注ぎ、大きめの隕石が集中したのが、不運にも茨※県だったのだ。
茨※県東部である。
そのため、西部の被害は最小限だった。
無傷とは言えないが、東部の被害を考えれば無傷と言っていいだろう。
あの程度で騒いでいれば、東部とは顔を合わせられねえ。
上から見れば一目瞭然だ。綺麗に真っ二つとなり、茨※県の右半分は完全に崩壊してしまっている。焼け野原でないだけまだマシだが、瓦礫の山と浸水で高くそびえるものはなく、そこにあるのは自然だけだった……自然の猛威だけがある。
本部に顔を出し、状況を聞いてみれば、進展はないようだった。今のところ、新たな隕石の落下も、地震の予兆もないらしい……海も安定しているようだった。
泣き面に蜂のような状況はしばらくはなさそうで……。少なくともデータ上は。
結局、隕石が突然方向転換したように、データ通りには動かないことが起こるのだ。もう安心だ、と思うのは危険だ。いつどこでなにが起きても対処できるようにしておかないといけない。
足りないものが多過ぎるし、いずれ支援はくるだろうが、まだ時間がかかるらしい。そして瓦礫の下に埋まっている被災者を助けるための救助隊も、到着はまだ遅れるようだ。
茨※県と比較すれば被害は少ないが、他の県も同じく震災による被害があるらしい。後手に回ってしまっているのは多方面で事故が起きているせいだ。
仕方ないとは言え、モタモタしている連中を叱ってやりたい気分だ。
向こうは向こうで、全力なんだろうとは分かっているが……。
「避難所にいる子供が多いんだが、親はまだ見つかっていないのか?」
「親が子を見つければすぐさま飛んでいくはずだが、それがないということは、もう親は瓦礫の下か海へ引きずり込まれたか、だろうな。期待はしない方がいい」
目の下の隈が酷い知り合いに聞いてみれば、そんな返答があった。
予測していなかったわけではないが……やはりきつい現実だな。
「子供たちの、親族は。……他県に引き取り手がいないわけじゃないだろう?」
「今の混乱でそこまで手が回るかよ。回線だってパンクしてるんだ、他県と連絡を取れるわけもない。緊急通話は別だが、ひとりひとりのガキの引き取り手を探してる余裕はないんだ、分かってくれ」
アタシはボランティアだが、本部で連絡を取り合い、避難所を管理している彼らはきちんとした仕事だ。途中で飽きてやーめた、と放り投げない責任感がある。信用できる相手だ。
被災者に居住スペースを渡すことで、本部は外へ移動している。簡易的なテントを張って、暑い中、全員が外と連絡を取り合い、マニュアルを越えた対処をしている。飲まず食わずで、寝ていない者も多いだろう……常に変化が起き続けているのが今だ。
日が落ちたが、大人は眠れるわけがなかった。
「
「おいおい……こんな状況で真実を伝える必要は……」
「もういない前提じゃなく、いる前提で動け。全員の子供の親を、探して引き合わせろ。無理でも、誰もお前を責めたりはしねえよ」
と、旧知の仲だけあって、アタシの動かし方を熟知している男だった。
「フン、やってやろうじゃないか」
「いいからいけ、こっちは忙しい」
一度も落ち着かない話し声から遠ざかりながら、アタシは避難所へ戻る。
子供たちの親が、今もまだ瓦礫の下に埋まっているとしたら――――絶望的なのは目に見えている。
だが、てんやを見つけた時の、小さな穴だ。大人は入れないほどの狭さだが、もしかしたら地中に空間があって、そこに避難している可能性も、ないわけではないのだ。
閉じ込められていた、という前例はいくらでもあった。
雪に埋まったわけじゃねえんだ、まだ助け出せる時間がある。
まだ、諦めるには早いだろう。
諦めるのは、できることの全てをやってからだ。
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