第2話 全員悪人、アウトレイジみたいな事件

 ホームズとワトソンは、京都の東山地区にある古い旅館へと向かう途中、周囲の風景に目を凝らしながら歩いていた。道を歩くたびに、時折聞こえる足音や木々のざわめきが、何か不穏な予感を呼び起こしていた。目的地に近づくにつれ、町の喧騒が遠のき、静けさが支配するようになった。


「このあたりは、確かに不気味な雰囲気が漂っているな」とワトソンがつぶやいた。


「そうだな、ワトソン。この街の古さが、何か隠された秘密を抱えているように感じる」とホームズが答える。彼は、事件の真相を解明するために必要な情報を整理しながら、心の中で計画を立てていた。


 数分後、二人は目の前にある古びた旅館に到着した。外観からして、長い歴史を感じさせるその建物には、無数の窓が並んでいるものの、どこか不気味で人が住んでいるようには見えなかった。


「さあ、ワトソン。まずは、ここに住む者たちがどんな人物かを調べることが先決だ」とホームズは冷静に言った。


 旅館に入ると、迎えたのは、年老いた男が一人だけだった。白髪交じりの髪、そして眼鏡をかけたその男は、見るからに無愛想で、どこか警戒心を持っているような表情をしていた。


「ようこそ。宿泊のご用ですか?」男は事務的に問いかける。


「いえ、実は、少しお話を伺いたいことがあって来たのです」とホームズは、冷静に返答する。


 男は少し不安そうに目を細めたが、何かを察したのか、言葉を続ける。


「お話を伺う? うちにはそんなものはありません。今は特に何もできませんから…」


 ホームズはその態度に少しだけ違和感を覚えながらも、無理に話を続けさせた。


「実は、ここで最近起こった事件について調べているのです。昨晩、高橋佳子という女性が亡くなったと聞きましたが、そのことについて何かご存知ではありませんか?」


 男の顔色が一瞬で変わり、ホームズの言葉を遮るように言った。


「その話は…聞きたくない。すぐにお帰りください。何も関係ありません」


 ワトソンは男の態度に疑問を抱きつつも、ホームズの冷静な対応を見守っていた。


「もちろん、無理に話す必要はありません。しかし、我々が知りたいのは、ただ一つ。あの日、佳子さんがどんな人物と会っていたのか、そしてその後どうなったのかです。彼女の友人として、あなたが何か知っているのであれば、話していただけないでしょうか?」


 男は一瞬ためらった後、ようやく口を開いた。


「知人…あの夜、確かに佳子さんは、何かを話していた。だが、その後、彼女が部屋に入ったまま出てこなくなった。それが最後だった…。その後、私は何も見ていない。だが、何かが隠されている気がしている」


 その言葉にホームズは、さらに深く注意を向けた。


「隠されている…?」ホームズは冷静に問い返す。「何か具体的な証拠があるのか?」


 男は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに目を逸らしながら言った。


「証拠? いや、そんなものはない。ただ、何か…変な空気を感じただけだ。だが、あの夜、佳子さんが話していた相手のことは何もわからない。ただ、見た目が不審だった気がするだけだ」


 ホームズは、男の言葉から得られた情報を元に次の行動を決めた。


「不審な人物…それが、犯人に繋がる鍵かもしれない。ワトソン、まずは従業員と他の住人について、詳しく調べる必要がある」


「了解だ、ホームズ」とワトソンが答えた。


 二人は旅館内を調べながら、住人たちに話を聞くことにした。すると、旅館の他の住人たちも皆、どこかしら怪しげで、不自然なほど口を閉ざす者ばかりだった。


 そして、すぐに明らかになったのは、全員が何らかの形で互いに繋がりを持っており、それぞれが過去に暗い背景を抱えている人物であることだった。最も重要なのは、旅館のオーナーが、過去に大きな犯罪に関わった人物であるということだった。


「全員が悪人だということか…」ホームズがつぶやきながら、ワトソンと共に次の手を打つ準備を整えた。


 旅館内での調査が進む中、二人はついに事件の核心に迫る証拠を見つけ出し、真実を解き明かす時が近づいていた…。



 ホームズとワトソンが調査を進める中で、旅館の住人たちはそれぞれ暗い背景を持つ人物たちであることが明らかになった。以下に、彼らのプロフィールを紹介します。


1. 旅館のオーナー:佐藤 一郎


年齢: 65歳


職業: 旅館オーナー


性格: 冷徹で計算高い。外見は老舗旅館の温和な主人だが、裏では利益のためなら手段を選ばない人物。


背景: かつて暴力団との関係が噂されていたが、表向きはそれを否定。最近では違法な賭博や麻薬の取り引きに関与していると囁かれている。地元の暗い部分での権力を持っているが、それを隠すために表向きは真面目な経営者を装っている。


関与: 佳子が亡くなった夜、彼女に関して何か知っている様子だが、全く語ろうとしない。その冷徹な態度から、事件に直接関与している可能性が高い。



2. 従業員:田中 美佐子


年齢: 40歳


職業: 旅館の従業員


性格: おっとりしていて、人懐っこいが、どこか遠慮がちな性格。常に緊張しているように見え、誰かに監視されているような雰囲気を持っている。


背景: 以前は地元の小さな店で働いていたが、何かの理由で転職してきた。過去に家庭内の問題を抱えており、時折そのことを思い出しては苦しむことがある。彼女もまた、旅館内で起きる不正行為を知っているが、表立ってそれに関わることを避けている。


関与: 佳子と親しい関係にあったが、事件当夜は他の従業員と一緒に仕事をしていたと言い張る。しかし、彼女の目撃証言は不確かで、真実を隠すために嘘をついている可能性がある。



3. 常連客:藤井 修一


年齢: 50歳


職業: 地元の不動産業者


性格: 穏やかで温和な人物に見えるが、その裏には強い支配欲があり、必要ならば手段を選ばない冷徹さを持つ。


背景: 地元でかなりの影響力を持つ不動産業者で、土地の買収や開発を手掛けている。しかし、そのやり方はしばしば不正規な手段を使っていると噂される。仕事が忙しいため、旅館の常連客でありながら、あまり長居はしない。


関与: 佳子が亡くなった夜、藤井は旅館にいたというが、周囲の証言によると、その夜、彼は他の客と一緒に深酒しており、事件に関して何も覚えていないと話している。しかし、藤井の不正行為が事件に関係している可能性は高い。



4. 客室係:鈴木 由美


年齢: 30歳


職業: 客室係


性格: 明るく快活で、よくお客さんと笑顔で会話を交わすが、感情が表に出にくいタイプ。何かを隠しているような雰囲気がある。


背景: 若いころから家族と一緒に旅行していたが、家計が苦しくなり、家計のためにこの仕事に就いた。周囲からは頼りにされているが、プライベートでは複雑な事情を抱えているようだ。彼女もまた、旅館内で起こる不審な出来事については何か知っているが、誰にも話そうとしない。


関与: 佳子と最後に話していたのは鈴木であることが判明しており、事件に直接関与している可能性が高い。特に彼女の証言が、事件解決の鍵を握っているかもしれない。



5. 宿泊客:中村 亮介


年齢: 45歳


職業: 無職(元弁護士)


性格: 一見、落ち着いているが、どこか鋭い視線を持つ人物。過去に犯罪に巻き込まれた経験があり、それを隠すために身を隠している。


背景: 以前は弁護士として活躍していたが、何らかの理由で弁護士資格を剥奪され、今は身を隠すようにして生きている。過去の失敗や不正により、世間から姿を消し、旅館で身を寄せている。


関与: 彼が関与している可能性が最も高い。中村は事件が起こる前に佳子と何度も密談しており、事件後に急いで旅館を去ろうとしていた。




---


このように、旅館の住人たちはそれぞれが過去の問題や秘密を抱えており、事件に深く関与していることが次第に明らかになってきます。ホームズとワトソンは、一人一人の動機と証言を慎重に解析し、真相に迫ることになります。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る