【カクコン参戦】俺のばあちゃん最強説

七月七日-フヅキナノカ

イジメられ編

 中学三年の時、俺はイジメ(カツアゲ)にあっていた。


 相手は同じクラスの不良。

 俺は奴に暴力を振るわれ、金を無心されていた。


 きっかけは何だったか覚えてない。何か奴の地雷でも踏んだのか、因縁いんねんをつけられるようになった。


 俺は色白でひ弱で人見知りで気弱だった。そこに目をつけられたのかも知れない。


 悔しかったが奴の因縁に口応えなど出来ようがなかった。ましてや殴り返すなどもっての外だった。奴は体格も良くて強かった。いや、俺が弱過ぎたのか。


 奴に金を要求されて、なけなしの小遣いを全部取られた。言いなりになるしか無かったのだ。渡さなければ殴られる。


 一度味を占めると、奴の要求はエスカレートして行った。


 もう無いと言っても、許されなかった。逆らえばトイレや体育館の裏で殴られた。


 奴は、顔は殴らなかった。親や先生にバレるから。こんな事をしてくる奴等は、ちゃんと考えているのだ。腹と脛と金的を中心に殴ったり蹴ったりしてきた。


 お年玉貯金も全部貢いだ。殴られるのが怖くて。弟からも借りた。


 誰かにチクッたらタダじゃ済まんと脅されていたので、誰にも言えなかった。


 お袋の財布から金を盗んだ。全部盗るとバレるので少しずつ。家計簿なんぞつけないお袋は全く気づかなかった。


 後で全てが分かった時、何かおかしいとは感じたけど、気のせいかなと思ってたとお袋が言ってたよ。


 気づけよ!


 いや、これは後から思ったことだ。盗んだ時はお袋にバレる方が怖かった。恐喝されていることは、誰にも知られたくなかった。変なプライドがあったのかも知れない。


 いわゆる厨二病? いや、中三だけど。


 今考えると、そんなクソみたいなプライドをさっさと捨てて早く楽になれば良かったのに、あの頃はひたすら奴が怖かった。


 お袋のキャッシュカードを見つけて、銀行で下ろそうとしたら、使えなかった。古くて使えないカードをお袋が放ったらかしにしていたのだ。暗証番号は知っていた。


「古いカードを誰かが使おうとした形跡がありました」

 銀行から電話があった。


 ちょっとの間だけ大騒ぎになったけど、被害が無かったので、皆んなすぐ忘れた。


 忘れんな!


 この事件の頃はもう、早く誰かに気づいて欲しいと思う自分と、知られたくない自分がいて、感情が迷子になってたよ。


 自分からは話せないけど、問い詰められて白状すれば楽になれるかも知れないと考えてたのかな。


 死んだ方がマシだと思ったこともあるよ。死ぬ勇気が無かっただけで。


 だが、俺のそんな細い蜘蛛の糸のようなSOSには、誰も気づいてくれなかった。ばあちゃんを除いては。


 その後もカツアゲは続いた。



 ➖解決編に続く➖

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