第4話
"CLOSE"
深夜一時
まだ少し肌寒いこの時間の風。
辺りの店は既にシャッターを閉じている。
少し離れたところにあるクラブからは
この街の哀しい鼓動が響き渡っていた。
それは哀しく綺羅びやかに
それでいて人々の寂しさを埋める音。
その音がする方向とは反対の通りを見ると
廃れた商店街の奥に、
先が見えないくらいの
薄暗い路地が広がっている。
まるで、陰と陽の狭間のような場所に
位置するこのBarは
'その'空間への入口のような
役割をしていた。
一度入ったら抜け出せない、
底のない闇。
チッ
取り出した煙草の箱を見つめ、
そこに最後の一本しかないことに気づく
誰もいない店の前で出た溜息と舌打ちは、
そのまま暗闇に溶け込んだ。
はぁ。めんどくせぇ
コンクリートの上にある
まだ少し煙のでている吸い殻を力任せに
踏みつけながら最後の一本の煙草に
大切に火をつけると
そのまま、スーツのポケットから無造作に
鍵を取り出し、半開きだった店の扉を施錠して
煙草を買いたすため
哀しく響く鼓動を頼りに夜の街へ出た。
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