恋人が不良と浮気していた上にグルになって俺を騙していたことが判明。怒りに燃えながらも正々堂々と反撃して不正を暴いた結果、全てを失った二人が絶望する様を見届けることが出来た
こまの ととと
利用された俺の逆転劇
俺は田中悠斗。ごく普通の男子大学生だ。
勉強もそこそこ、サークル活動も人並み程度にこなしてる。
そんな俺には二年間付き合った彼女、白石美咲がいた。
彼女は大学のアイドル的存在。誰もが振り向く美貌の持ち主だ。
自分のような平凡な男に、まさか美咲が惹かれるなんて。
まさに人生最大の幸運、何があるかわからないものだ。
……そんな風にのんきに考えていた。
その幸運がただの錯覚であることを知るのは、大学の試験前日だった。
俺は今度の試験勉強のために図書館に籠ろうとしていた。
実際図書館に着いた時、俺は聞き覚えのある声を聞いた。
美咲だ。
だが、その内容は耳を疑うような会話だった。
「ははっ、あいつほんと単純だよな。『勉強頑張る!』って張り切っちゃってさ」
相手の声の主は同じ大学の先輩、木村亮だった。
木村はサークルの中心的存在で、俺も当然面識がある。
そして、その声に笑いながら応じたのが美咲だった。
「ははっ。だって楽じゃん? 少し褒めれば言うこと聞くし、馬鹿みたいにテストについて教えてくれるんだよ?」
「利用できるだけ利用してさ、そして飽きたら捨てるんだろ?」
「当然でしょ。でもそろそろ見切りつけようかなぁ? 亮さんも待たせちゃってるし」
「悪い女だぜ。へへ」
俺は全身の血が凍るようだった。
目の前の美咲はあまりにも冷たく、別人のように感じられた。まるでアイドルのような天使の面影がない。ひたすらに醜く感じられた。
心臓が締め付けられるような痛みに耐えながら、俺は無様にもその場を去ることしか出来無かった。
その夜、頭から離れない今日悲劇に苦しみながらも俺は考えた。
(嫌だ……このまま黙って引き下がるなんて! これじゃただの負け犬だ!)
俺は、あれほどのクズならば何か不正をしているに違いないと確信していた。
その証拠があれば、やつらを徹底的に貶めることが出来る。
数日後、試験の日。
試験開始直前にも木村と美咲が親しげに話しているのを目撃した。
怒りと悲しみで胸がいっぱいだったが、それでも俺はやってみせるという意気込みがあった。
試験は学内で高い評価を得るための重要な機会だ。
優秀な成績が認められれば、大学での立場が大きく変わる。
そしてこの数日の調査の結果、木村と美咲がこの試験のために裏で手を回し、不正に答えを入手しているという情報を手に入れた。
(今に見てろよ……!)
試験監督が「開始!」と声を上げる中ペンを握りしめ、問題用紙に集中するふりをしながらも心の中で笑っていた。
なぜなら――その不正の証拠を、俺はすでに手に入れていたからだ。
試験が終わった翌日、キャンパスは静まり返っていた。
だが、俺は知っている。その静けさは嵐の前の静けさにすぎないことを。
用意していた「証拠」が、学内の公式掲示板に匿名で投稿されると、瞬く間にその衝撃的な内容が広まった。
木村亮が、不正ルートで試験の回答を入手している写真。さらに、それを白石美咲に送るメッセージのやり取りが並んでいた。
『亮、これ本当に大丈夫? バレたらヤバくない?』
『心配すんな。俺が守ってやるよ』
『ありがと。じゃ、例の場所でお礼しなきゃね』
木村と美咲が裏で結託していた証拠に他ならなかった。
最初に掲示板で見つけた学生たちは「これマジ?」と信じられない様子だったが、すぐに事態は大騒動に発展した。木村と美咲本人であることは疑いようがなかった。
「白石って、あんなに清楚な顔してこんなことしてたのかよ!」
「木村先輩、やりたい放題だったんだな。あいつ、特待生候補だろ? 絶対アウトだろ。これで評価が地に落ちるのは確定だな」
やがて、騒動は大学の運営側にも届き、木村と美咲は緊急で呼び出されることになった。
俺はその光景を遠目から眺め、内心で冷笑を浮かべた。
(へっ、ざまぁ見やがれ)
数日後、正式な裁定が下された。
木村は試験結果が無効となり、特待生候補から除外。
それで終わるわけもなく、停学処分が下された。
一方、美咲にも連帯責任が問われた。彼女は学内活動の停止処分を受けることに。
(馬鹿な連中だぜ、まったく。おかげでスカッとした)
俺はその結果にある程度満足していたが、それで終わりではなかった。
あえて美咲との「最終決着」をつけるため、自ら接触することを決めたのだ。
(完全な引導を渡してやる。覚悟しろよ、クソ女!)
夕方、キャンパスの片隅で美咲と向き合っていた。
美咲は目元が赤く腫れていて、すっかり自信を失った様子だった。
「悠斗、お願い…話を聞いて。私、本当は脅されて。それで無理矢理あんな事を……。私だって嫌だったの! 反省してる。本当は悠斗に止めて貰いたかった」
彼女の声は震えていた。だからなんだという話だが。
言い訳があからさまだし、言葉の端に反省がまったく見えてこない。
この期に及んで人のせい、なんでこんな女が好きだったのか。
「反省? お前が反省してるのは、俺を利用したことじゃなくて失敗したことだろ」
美咲はハッと顔を上げた。
その顔は、本心を言い当てられたのか悔しさを滲ませていた。
結局、これがこの女の本性ってことだな。
「そもそも、どうして木村なんかとつるんでたんだ?」
今更、特に興味も無かったが、きっかけぐらいは後学の為に聞いておいて損はないだろう。
美咲は沈黙した後、絞り出すように答えた。
「……違うの。最初はただ、先輩に気に入られたくて。そしたら色んなこと教えてくれたなの。でも気づいたら、抜け出せなくなってた」
(……つまらん理由だ)
彼氏が居ながら気に入られたい、というのもわからないし。
その言葉を聞いても心は揺るがなかった。
「俺に謝罪なんて聞きたくも無い。だが、少しでも本当に反省してるなら……もう俺の前に顔を出すな」
「そんな……。で、でも! 好きでいて、いいよね?」
「思ってもいない事を口に出すなよ、反吐が出る」
それだけ告げると、その場を後にした。
後ろからは無様に泣き崩れる声が聞こえて来たが、振り返らなかった。
あれだってきっと、俺の事で泣いてるんじゃないだろう。
◇◇◇
掲示板投稿の影響は大きかった。
内部告発が功を奏したことで、大学の試験運営が見直され、より厳格な体制が整えられることになった。
それとは別に、俺の試験結果が評価された。これもあいつらを見返してやろうと思ったから、その努力は無事に報われたなた。
数週間後、俺はキャンパス内で新たな友人たちと笑顔で会話していた。
「田中君、最近すごい頑張ってるよね!」
「いや、普通だって。でもせめて言うなら、きっかけが一つあったってことかな」
今の俺は、彼女が居た頃よりもずっと自信に満ちていた。
今はもう、くだらない女の裏切りに囚われることもない。
自らの力で築いた未来に向かって、俺は確かな歩みを進めていくのだった。
恋人が不良と浮気していた上にグルになって俺を騙していたことが判明。怒りに燃えながらも正々堂々と反撃して不正を暴いた結果、全てを失った二人が絶望する様を見届けることが出来た こまの ととと @nanashio
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