喫茶店の、ウエイトレス!
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
30代半ばの時、仕事で和歌山に行った。和歌山で終業時間を迎え、会社に“直帰する”ということを伝え、僕は食事が充実してそうな喫茶店に入った。その店は、食事も充実していたが、スタッフも充実していた。ウエイトレスさんがキレイで色っぽい。歳は30代の後半だろうか? 背が高くスレンダー。僕は、名刺の裏に“気が向いたら連絡ください、一緒に食事に行きましょう”と書いてソッと手渡した。
すると、その晩、そのウエイトレスから電話があった。ウエイトレスは好子、37歳(もうすぐ38歳になるらしい)、バツイチ、子供無し。電話は盛り上がった。盛り上がったので、次の土曜に和歌山でデートすることになった。
デート、駅に行くと、好子が赤い車で待っていた。合流する。
「どこか、行きたいところある?」
「僕に任せたら、行き先が決まってしまうで」
「うん、ちゃんとわかってるから、大丈夫やで」
車はホテルに着いた。出会いからホテルまで、あまりにもトントン拍子! 僕は美人局を警戒した。だが、ここまできてひくわけにはいかない。
素敵な時間を過ごすことが出来た。
好子は身長173センチ、僕よりも3センチ背が高かった。聞くと、若い頃はモデルをやっていたらしい。ベッドの上では、僕を優しく抱き締めてくる好子との営みは暖かくて楽しかった。
僕の誕生日、僕が好きなブランドのTシャツを贈ってくれた。サイズが合わなくて着れなかったけれど(当時の僕は肩幅が広く、胸板が厚かったから)。僕は、好子と真面目なお付き合いをすることも考え始めた。
楽しいデートは3回続いた。好子に腕枕をしていると、好子が言った。
「崔君、楽しかったけど、もう会われへんわ」
「なんで?」
「私、お金持ちのお爺ちゃんの愛人をやってるんやけど」
「そうなんや?」
「お爺ちゃんに、崔君のことがバレそうやから、もう会われへんわ」
「なんで? 愛人やろ? 奥さんならわかるけど、愛人やったら遊んでもええんとちゃうの? 愛人なのに、そこまで束縛されなアカンの?」
「うん、束縛されてるねん」
「えー! そのお爺ちゃんは面倒臭いなぁ」
「でも、結構な金額をもらってるから」
「好子さん、自由が欲しいとは思わないの?」
「うん、まあ、こうやってチョコチョコ遊んでるんやけどね。やっぱり1人の男性と付き合うのは難しいわ。つまみ食いにとどめておかないと」
「もう、好子さんの心の中では答えは決まってるんやろ?」
「うん、もう崔君には会わないって決めてる」
「じゃあ、しょうがないな、今までありがとう」
「楽しかったよ、崔君」
簡単に親しくなった人とは、簡単に離れ離れになるということだろうか? こうして、僕は経験人数だけが増えていく。こんなにも、愛を求めているというのに。
喫茶店の、ウエイトレス! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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