WW6編 ナノ視点 第二十二話 不便
〜〜マギス北区 第四国立病院にて〜〜
肉眼では捉えられない程の速度で、マギス郷上空を飛ぶナノ。数十秒程経つとその動きを止め、目下には大きな病院が映った。煉瓦造りの重厚な建物からは、上空にいても内部の忙しなさが伝わる。
ナノ(座標書き換えで入ったら、お医者さんたちがびっくりしちゃうわね。一度入り口まで降りましょう)
背中の黒い翼の動きを緩め正門前に着地する。彼女は律儀に受付に足を運ぶと、門を開けた瞬間から、医者たちの怒号が聞こえてくる。この非常時で人手が足りないのか、受付には白衣を着ていない若い職員が1人のみであった。
職員「負傷者の方ですか?症状を教えていただけますか?」
ナノ(あ、私のこと気付いていないわね)
職員がナノに気付かないのも無理はない。ただでさえ幼い年齢で軍幹部に就任したナノ。戦場に立つ時の昏い顔立ちとは異なり、今はややあどけなさが残る表情で職員に話しかけていた。それに加え、彼女の軍服は上官であるリーシャの特権で、年相応の非常に可愛らしいメルヘンチックなデザインに指定されている。そのため初見ではまず軍人と判断する者はいない。
そんな職員に対し、ナノは軍隊手帳を差し出して告げた。
ナノ「あの〜実は私こういう者で…医療本部のある部屋を教えていただけますか?」
職員「こ…これは、提督様でいらっしゃいましたか!とんだご無礼をいたしました。医療本部は3階奥の会議室です。すぐさま医院長にも伝達いたします。」
ナノ「あ、ありがとうございます。では失礼しますね…」
ナノ(はあ、師匠…やっぱりこの軍服不便ですよ……でも、「こんなに可愛い娘が戦場に立たないといけないなんて悲しい話だわ。せめて服装くらいは、普通の女の子であって欲しいの」だなんて……///)
階段の登りながら、僅かに頬を赤らめるナノ
ナノ(そんな事を言われたら、服装を変えたいなんて言えるわけがありません…)
微かに俯き、心中でそう唱えるナノであった。
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