航時鉄道
こどくのマスター
事故
時は2345年、世界は他の時代へ旅行することが当たり前になっていた。だが、他の時代へ行くための手段である航時鉄道は事故が多いのだ。この小説は、事故によって最も過酷と言われた年、1774年に行ってしまった男の物語である。
「2019年行きの列車はまもなく発車いたします。この列車にお乗りのお客様は213番線までお越しください。」
とても大きい近未来的なターミナルにアナウンスが響き渡る。そのアナウンスを聞いて、急ぐように213番線へ向かった男がいた。その男の名前は松坂翔(まつざかしょう)、2345年の東京に住む24歳の男だ。翔は久しぶりに休暇が取れたので、令和が発表された2019年に行こうとしてるのだ。翔は2019年行きの鉄道が出発する213番線へ小走りで向かった。213番線に着くと、30両ほどの長さの近未来的で窓が大きい列車がいた。翔は切符を見ながら25号車に乗車し、椅子に座った。少しすると、列車はゆっくり動き出した。列車はホームを出るとスピードを出し、カラフルで線路が浮いた不思議な空間に入った。そして、周りには沢山線路があった。この列車が入った不思議な空間のことを時空線と言い、それぞれの列車がそれぞれの時代へ行くための空間である。
2時間後
「まもなく、2019年に到着いたします。お降りの際はお忘れ物に気をつけてください。」
列車の中でそのアナウンスがされた。線路の先には入口のようなものがあった。しかし、その入口へ続く線路は壊れており、繋がっていなかった。列車は壊れた線路を通ると脱線してしまい、そのまま不思議な空間を落ちていってしまった。
列車は不思議な空間を落ちたあと、1774年の江戸にある森林に墜落してしまった。列車に乗っていたほとんどの人は墜落の衝撃によって亡くなってしまったが、その中に1人だけ生き残っている人がいた。
「痛って…あれ?生きてる?」
なんと翔は奇跡的に生き残っていた。翔はなんとか起き上がり、周りを見た。周りは森のような場所で、木をなぎ倒して地面に倒れている列車があった。何両かの列車はバラバラになっており、煙を出していた。
「ここ…どこだ…?」
翔は痛む足を引きずりながら歩いた。すると、歩くにつれてどんどん人の声が聞こえてきた。翔は人の声がする方に歩いた。すると、そこには江戸の光景があった。木造の建物がたくさん建っており、多くの人が行き交わっていた。
「おい、お前。」
行き交わっていた人のうちの1人が急に翔に話しかけてきた。
「な…なんですか?」
「お前、なんでそんな変な服着てんだ?」
「いや…これは…」
「お前、どっから来た?」
「えっと…忘れてしまって…」
「忘れた?そんなアホな話があるか。お前、金はあるか?」
「無いです…」
「無いだと?お前、どこ住んでんだ?」
「それも忘れてしまって…」
「ならうち来るか?」
「え?いいんですか?」
「どこ住んでるかも忘れてしまったやつをほおっておけないだろ。しばらくうちで暮らしていいぞ。ついてこい。」
そう言って男は歩いた。翔はその男のあとを追った。
「あの…変なことを聞くようですが…今って何年ですか?」
翔は歩きながらそう訊いた。
「本当に変なことを訊くな。今は安永3年だよ。」
「安永3年…1774年か…」
翔は日本史が得意なので、元号を聞いた瞬間西暦何年か分かった。しかし、西暦が分かった瞬間翔は焦った。1774年は世界で最も過酷と言われた年で、1774年の8月13日、地球の近くを通過した小惑星の一部が房総半島に衝突し、関東の30%が隕石による火災によって被害を受け、隕石の衝突により大量の塵が大気中に舞い上がり、数カ月間昼でも暗い状態が続いた。さらに、江戸で伊呂母(いろも)という名前の致死率90%の原因不明の病が大流行し、江戸の人口の3分の1が亡くなった。翔はそんな年に来てしまったのだ。そう考えると、翔はとても青ざめてきた。
「お前、どうした?そんなに顔を青くして。」
「いや…何でもないです…」
2分後
「ほら、着いたぞ。」
男が指差した先には江戸の一角にある古びた長屋が並んでいた。その中の1つが男の住居らしい。
「本当にありがとうございます。」
翔はそう言って頭を下げた。」
「お礼されることなんかしてねぇよ。ほら、入れ。」
そう言われて翔は長屋の戸を開けた。すると、土間の空間が広がっており、かまどがあった。翔は靴を脱ぎ、畳へ上がった。男はタンスのようなものから江戸時代の服を出し、翔に渡した。
「これに着替えな。その服、変だしな。俺は別の部屋に行ってるわ。」
そう言って男は別の部屋に行った。翔は自分が着ていた2345年の服を脱ぎ、江戸時代の服を着た。
「すみません、着替え終わりました。」
翔は男に大きめな声でそう言った。
「おう、着替え終わったか。そういえば俺の名前を言ってなかったな。俺の名前は徳次郎だ。お前の名前は何だ?」
「私の名前は松坂翔です。」
「翔か、珍しい名前だな。しかも名字を持ってるとは。まあそれはそうと、よろしく。」
「よろしくお願いします。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます