第5話 流刑地

 

 彼が、最果ての流刑地に送られる道中、私たちは十五歳になった。それは、大人と認められる年齢だ。


「彼は今頃、長い旅の途中だろう」


 そう思うと、胸の奥に悲しみがじわりと広がった。


 流刑執行人の老人、ティオスには特別な指示を与えている。かつて、疫病から孫を救ったことで、彼は私の信奉者の一人となった。

 

 うまく誕生日プレゼントを渡してくれるといいのだけれど。


 ティオスに旅立つ前、我が王国に伝わる宝剣を手渡した。


 彼は氷の島に彼を連れて行き、その後は近くの街に住むという。


「妻の眠る場所ですから。しかし、あの島はとても美しく、魔物も強いですぞ」


「島の街でもいいのよ。そうしましょう」私は慌てて提案した。


「大丈夫ですよ。私が毎週、食糧と必要な道具を持って様子を見に行きます。伝書鳥を使って報告も致しますよ」


「危ないと思ったら、ティオスを必ず助けてね」私は思わず彼の手を取った。


老人は一瞬目を見開き、静かに言った。

「命に代えても必ず」と。


 しばらくして、「氷の島に着いた」との連絡があった。氷の島は、雪と氷に覆われる静かな場所。


 彼はその地で剣の練習と読書に励み、老人とともに武術の鍛錬をしているという。


 私は、最期の日までにやるべきことを始めていた。


 まずは国王に上申し、飢饉が発生している帝国を属国化した。


 次に、第一王子を失脚させることだ。彼こそが黒幕。王位継承者でありながら、兄弟姉妹すら手にかけ、罪なき民衆に圧政を敷くその姿を見て、私は「手を下さなければならない」と思い定めた。


 しかし、彼は大軍に奢り、敵国の寡兵に不意を突かれて戦死した。焦りもあったのだろう。


 これは時の流れのうねりだ。飲み込まれるわけにはいかない。他人事ではないのだから。

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