いじめ
モデルのような端正な顔立ちの少女が教室に入ってきた。
濃褐色のセミロングに、宝石のような青い瞳、スラリとした長身、クラス中の男女が羨望の眼差しで彼女を見つめる。
彼女の名前は
まさに完璧な美少女だった。
そう、ただ一つの欠点を除けば……
「ねえ、みんな何か臭くない? 教室は言ったら変な臭いがするんだけど」
愛里が大声で言う。
すると、みんなクスクスと笑いながら1人の少女の方を見た。
クラスメートの冷たい視線に怯えオドオドする少女は縮れた髪、ギョロりとした目、大きな鼻、分厚い唇、老人のようなシミだらけの顔をしていた。
毒島ぶすじま 牧美まきみは家が貧乏な事や、容姿の事で昔から苛めにあってきた。
愛里が牧美の席の前に立つ。
「ねえ、バケ美ちゃん、臭いしキモいし、何でアンタみたいなのが生きてんの? 存在してるだけで迷惑なの。学校に来ないでくれる?」
嫌悪感むき出しに愛里が言った。
バケ美というのは化け物という意味で愛里が付けた牧美のあだ名だ。
愛里は昔から周囲から可愛い、キレイだと言われてきたが、心の中に不安をいつも抱いていた。
自分がもし、醜くなってしまったら、もしも自分が醜く生まれていたらという事を考えると気が狂いそうになるのだった。
「ごっ……ごめんなさい、ごめんなさい」
牧美はボソボソとした声で謝った。
「謝るぐらいなら消えてよ。ねえ、バケ美に学校に来て欲しくない人、手を挙げてー」
マキナと歌音以外のクラス全員が手を挙げた。
みんな人気者や強者の味方になりたいのだ。
「ほ~ら、みんな牧美に消えてほしいってさ。早く家に帰って学校に来ないで、それか首吊って死んでよ。私は醜いものが大嫌いなの!! 見てるだけで私まで汚くなりそうなの!! 何で神様はバケ美みたいな醜いものを作ったの! 」
愛里が狂ったように叫ぶ。
そして、制服のポケットから制汗スプレーを取り出すと牧美の顔に振りかけた。
目にスプレーの液が入ると痛みで目を開けられなくなった。
「ゴホッ! ゴホッ……ごめんなさい、私だって醜くなんて生まれたくなかった! もう死にたい……」
スプレーが鼻や口にも入って牧美は咽た。
「うるせーよ、じゃあ死ね! あんたが死んだらみんなが喜んでくれるよー、ねえ、そうだよねー? 死ーね!死ーね!」
愛里が手を叩きながら叫んだ。
「死ーね! 死ーね!」
クラス中が手拍子をしながら囃し立てる。
突如、歌音が立ち上がり、愛里に詰めよった。
「もう、いい加減にしなよ!! 毒島さんが、あなたに何をしたっていうの?」
歌音が声を荒げる。
「はっ、何いい子ぶってんの? ムカつくんだけど!! 悪いのは醜い姿で周りを不快にしてるバケ美の方でしょ?」
愛里が言い返す。
バシッ!!
歌音が愛里に平手打ちをした。
「醜いのは人をイジメて喜んでる、あなたの方でしょ!!」
歌音が声を張り上げた。
叩かれた頬を押さえながら、愛里は目に涙を浮かべながら歌音を睨む。
「あんた達、絶対に地獄を見せてあげるから、覚えてなさいよ!!」
愛里は牧美と歌音を指さしながらヒステリックに叫ぶと、自分の席に戻った。
牧美は自分を助けてくれた歌音を嬉しそうな顔で見つめていた。
「毒島さん、大丈夫?」
歌音が優しい声で尋ねると牧美はコクリとうなずいた。
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