86パーセントのバレンタイン

コーヒーの端

ひとつのチョコレート

 私は、彼にチョコレートを渡そうか迷っている。確かに、私は彼の事が好きだ。だけれど、どこかその気持ちに、引っ掛かりがあるように思える。

 簡単に言えば、中途半端なのかもしれない。クリスマスが近づくと、恋人が増えるみたいに、私もバレンタインの日が近づいて、浮かれているのか。

 いやいや、だけれどこの気持ちに間違いはない。私は、数ヶ月前の体育祭の徒競走でみっともなく転んだ。恥ずかしそうにしている私に、「ナイスファイト!」と声を掛けてくれた彼。

 その声は、私を虜にするのに十分な暖かさを持っていた。

 その二ヶ月後、文化祭でも彼は優しかった。学級別の展示を作っていた時の出来事。ペンキをみっともなくぶち撒ける私の元へ走ってきてくれたのも、彼だった。

 この気持ちは嘘じゃないけれど、どこか引っ掛かるものがある。その正体に、本当は気づいている。こんな風にドジを踏みがちな私は、彼の隣にそぐわないという事を、内心では理解しているんだ。この不安こそが、引っ掛かるものの正体だと知っているけれど、認めたくないのだ。

 だから、数パーセント分の躊躇いを、このチョコレートに込める。僅か14パーセントのこの躊躇いを、100パーセントの「好き」の気持ちから引き算して、「カカオ86%」のそれを彼に渡そう。

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86パーセントのバレンタイン コーヒーの端 @pizzasuki

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