マギアポリス探訪記

アノルデンこまち

第1章「奇縁の潮路」

第00話「プロローグ」

この物語はフィクションであり、実在する人物や団体、地名、事件などとは、一切関係無いことをお断り致します。

また、この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。




――また君達が笑いあう儚い夢を見た。

現代西洋っぽい知らないオフィス街で、無重力のように浮かびながら散策している夢を見ていた。

色んな系統の服装の人達が、1つの街に共存していて、それぞれがどこかへ向かって歩いている。

中でも、鬼の角みたいなものが頭に2つ取り付けられていて、金髪に菖蒲色のメッシュが入っているさわがしい少年と、西洋っぽい顔立ちをした深緑色の髪の少年が、こちらに向かって歩いてくる姿がひと際目についた。

この2人は毎回私の夢の中に出てきては談笑している。


鬼少年「え~? ボブは結構まともなキャラ枠だろ~?」

緑少年「誰だよ。どっから生えてきたんだよボブ」

鬼少年「あ~これは誤植ですね。本来、"僕は結構まともなキャラ枠だろ?"ってセリフだったんですけど、編集の方がネームの手書き文字を"ボブは~"だと勘違いしちゃったみたいです」

緑少年「お前はコミックの主人公か何かか?」

鬼少年「え? あぁ、そうだよ? 今更?」


鬼少年「ボブ、主人公だから……!」

緑少年「また間違ってる間違ってる!! 大丈夫? この物語の編集担当の人疲れてない?」

鬼少年「なんかこの間、"エナドリ6本と卵をバケツに入れてバケツプリン作るんだ!"とか言ってたよ」

緑少年「既に正気の沙汰でない!! 疲れてるんじゃなくて狂ってる!!」


……私は2人の目の前で浮かんでいたのだが、彼らは避けることもせずそのまま

どうやら夢の中の人達には、私は認識されていないどころか、夢の中では実体すら存在していないらしい。


そうして、夢の世界に浸っているうちに、気づいたら視界が真っ暗になっていて、

あの街の喧騒が一切聞こえなくなっていた。



……代わりに聞こえるようになったのは、スマホのアラーム音だった。

新しくなった年にすっかり慣れてきて、未だ肌を乾かす風が吹くころ。

蟲は冷たい土の中で二度寝、私も温かい布団の中で二度寝二度寝……するわけにはいかなぁい!!


2022年2月18日、金曜日、午前7時22分。

青髪の八潮三姉妹の次女である私、"八潮晴海やしおはるみ"は、双子の妹である"凪帆なほ"と大学へ向かう支度をし始めた。

高校生に上がった年以降、さすがに三姉妹間で洗面所を取り合うことも無くなった。

3つ上の"美咲みさきお姉ちゃん"は実家に帰ったため、尚更洗面所待ちをすることが無くなった。

……そういえば、私と凪帆は今年の10月でもう20歳か。なんだかここ数年、急に時間の流れが速くなってきたような気がする。


さて、今日もこの微妙な立地をしているアパートを出て、モノレールで空を駆けて東京にある大学へ向かうのだ!



  ◇



晴 海「今日は写メールギャル子ちゃん使ってみようかな」

凪 帆「おっ?珍しいチョイスだね」

晴 海「なんか今日そういう気分なんだよね」


同日午後11時38分。明日は休日ということで、私達は大学から帰宅した後、対戦型のシューティングゲームで遊び始めた。

ノートパソコンにコントローラを繋ぎ、そのノートパソコンの映像をHDMIケーブルでテレビに繋いで映し出し、大画面で遊んでいる。

私は普段使っているキャラとは違うキャラで遊んでみたのだが、当然攻略の勝手や使い心地が変わってくるので操作がおぼつかなくなってくる。

だが、時々こうしていないとせっかくの二人対戦がマンネリ化してきてしまうので、定期的にどちらかが普段使わないキャラで遊んでいる。



……そうして、夢中になって遊んでいる内に、段々と日中の疲労で眠気が出てきた。

もう日付が変わってから数十分ほど経ったぐらいだろうか。


いつの間にか……私達は……意識を、失っていた……。

そう気づいた時には、既に夢の中だった。

またあの金髪の鬼と緑髪の少年が出てくるのかと、そう……思っていたのだが……。


どうやら、夢の中ですら無かったらしい。


なんとなく埃っぽい空間と、いつにも増して硬く感じる背中、そしてうるさい波の音。

明らかにいつもの部屋の匂いではなかった――――。



――第01話「異世界に迷い人」へ続く……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る