落ちぶれ君のトキメッ記

@blue-mountain

落ちぶれ君の春

いつだって普通だ。いや、普通以下なのだろうか。俺の19年の生き様、なんて無様なんだ。小学校で書かされた将来の夢には、お医者さんとか書いてたっけ。それが今じゃ、普通の大学一年生。普通?やってらんない。ほんと。

大学ではよく言えば悪目立ちしていないし、悪く言えば影の存在、陰キャという奴だ。授業は単位が取れるギリギリを攻めて出席をする。幸い、昔から頭はそこそこいいので、試験は適当にやってりゃパスできるし。

って、さっきも言ったけど、何やってるんだ俺!こんな生活を続けて何になるってんだ!夢を叶えるんだろ、夢を!あ、そう言えば夢ってなんだったっけ?んー、とにかく!このままじゃいかんわ!変わるぞ自分!



って考えてたのが半年前。20XX年秋のお話。そして、俺、水野隆太は大学編入学してしまい、20XY年春に至る。自分を変えるのは、ビックな事をしなくては。そうだ、編入しよう!と安直に考えて前の大学とレベルの変わらない大学へ編入したのだった。笑ってくれ。しかし、俺はやってやるぞ!


入学式0。授業初日0。授業2日目0。え、なんの数かって?決まってるじゃないか。話した人の数。ん?それってヤバない?変われてなくない?今日は授業3日目。今日こそは、今日こそは友達作って、連絡先交換して、放課後遊びに行っちゃうから、見とけよー!なんてニヤニヤしながら1限の教室の隅っこの席に座ろうとしたら黒髪でスタイル抜群、理想の恋人No.1だと思われる美女が同じ席に手をかけているじゃないかー!

「あっ」「あの」

同時に声を発して、余計に恥ずい!ただ、ここは男だし、落ち着いて、冷静に席を譲らなければ。

「この席、どうぞ、、、」

言えた。この大学で初めて発した言葉!

「ありがとう。」

話してもらえた!

「君、優しいね。ねえ、良かったらこの授業、隣の席で受けようよ。」

でも、隅の席譲っちゃったし、どこ座ろうかなってえ?えーーーー!夢ですか、神様、これは夢なのですか!

「あ、嫌だった?ごめんね」

ヤバい、困惑が表情に現れてしまった。このチャンスは逃したくない。勇気を振り絞って、

「いやいや、むしろ俺でいいの?」

「うん、仲良くなりたいし」

「じゃあ、お隣、失礼します」

「うん、よろしくね!」

彼女のくしゃっとした可愛い笑顔を見たら、もしかしたら、もしかすれば俺の一年越しの大学生ライフ、俺の春が始まるかも!なんて思ってしまった。

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