第2話 別世界への一歩

 大学2年の9月。


毎年毎年、留年してはいけないと必死に過ごしてきた。


 そういえば、私たち6人グループは相変わらず恋仲にならず出会った日からずっと同じ感じのままだ。もう2年目か。


 食堂で次々とメンバーが集まった。

今日は梓はいない。風邪で休みと。


 

『週末、映画観に行かない?』

湊が誰を指定したわけでもなく言い出した。


 桃は家族と美術館に行くと先日話していたのは覚えている。


なんて家族で優雅な休日だ。


昴はバイトや課題があり

顔で行けないとアピールしている。


 私は予定がないし、暇だ。

『湊!何観たいの?いいよ!いこ!』


『まぢ!じゃあ土曜いい?戦争もんなんだけど平気?』


『大丈夫!わたしオールジャンルいける口』

そう。わたしはイケメンも色んなジャンルいけるし自分にとって特別や1番が逆にないからね。


『横浜のムービルに13時に待ち合わせな』

『了解!』


 木、金と過ぎ、土曜日。

映画観るんだし楽な格好!

とTシャツ、デニムにスニーカーで出発した。 

ラフってやつ。


お洒落とかすれば良かったかな。


まっいっか。湊だし。


 12時40分横浜駅到着。

相変わらず人だらけ。けど気にはならない。

配られたティッシュを受け取り待ち合わせ場所まで歩いた。



 突然音が消えた。


 歩いている人が止まった。


 風がふいた。


あれ。  眼鏡の店がある。


相変わらず可愛いパステルカラー。



甘い香り。

漂う


身体は引き寄せられていく


カランカランカラン〜


心地が良い音。



『あ!この前のお姉さん!!いらっしゃいませ』


この前って、、、、何年前よ、、、、

   

でも見つけた。私の夢じゃなかった。


『あのー、、、前に言っていた眼鏡ありますか、、、?AIなんちゃらのやつ』

何故か恥ずかしくイケメンとか言い出せなかったがすぐ応えてくれた。


『ありますよ!フレームどれがいいですか?』


私が買いたいってもう分かったのかすぐさま目の前に並べられた。


ピンク、ブルー、ホワイト、オレンジ、全てパステルカラーで綺麗な色味だった。


『ピンクで』


待ち合わせ場所まで急いだ。


甘い香りがまだ残っている。


『乃亜!ギリギリやん!行こ』

『ん?湊?』

『ん?なに?』


 何だろう。鼓動が聞こえていた。

眼鏡を掛けて見た湊が湊じゃない。

いやいや。そんな訳あるわけがないんだ。


『早く買わないと!ポップコーン食べる?』

『セットにする?』

『な!乃亜?具合悪いの?』


あ、、、、脳内は完全にフリーズしていただろう。

『ごめん!全然平気!この通り元気だから!あ!

ポップコーン食べたいからセットにしよ』


『了解』 ニコッて笑った湊。


また止まってしまった。わたし。完全に。

湊ー笑顔とか反則。


カップルセットを湊が両手に持ち席まで運んでくれた。


大迫力の銃声が飛び交う中

私の心臓の音のが遥かにまさっていた。


映画の時間よありがとう。


とりあえず口に運ぶ

甘い香りはしないポップコーン。


『イマイチだったなー!乃亜どうだった?』

『あ、楽しかったよ。』

目を合わせるのが困難。


『乃亜、いつもコンタクト?眼鏡初めてみた!似合ってるじゃん!可愛い可愛い』


『ありがと!うんちょっとつけてみた』

終始、ぎこちない感じで湊には本当に悪かった。


湊、、、、顔が見れない程かっこいい。

湊だよね?


駅までの道なりが長く早くわかれたかった


『また月曜!じゃあねー!乃亜』

   ほっとした。


いつの間にか家に辿り着き、鏡の前に立っていた。

眼鏡を掛けてみた自分を見つめて言葉を失ってしまった。私の顔が、わたしじゃない。

外してみた。

いつもの私だ。

掛けてみた。

美女だ。

いやいや。わたしそんなにブスじゃないよ。

ブスじゃないからねわたし。

自分に言い聞かせたり。


けどなんだろう。面白いなこの眼鏡。

人生2度目の不思議を味わった。


部屋の香りは今日は全く感じなかった。


枕元に眼鏡を置き深い眠りに入った。

疲れたのだろう。


『行ってきますー』

『乃亜、眼鏡可愛いじゃん!どうしたの?』

ママは毎日褒めてくれるね。

『行ってきます』

優しい返答もしない私って。


大学に着いてルーティンが始まるが眼鏡を掛けているせいかソワソワしている。


『あ!乃亜!』

昴が小走りに来た瞬間私は

『あ!』

と顔に両手を当ててしまった。

『どした⁈』

『あ、いや!なんでもないアハハ』


昴⁈え⁈昴だよね⁈

えーーーー!!

昴、普段も一際目立つ存在だけど

更に目を合わせられなくなる程になるとは。


ちょっと待って。もうここまできたら笑うしかないよ。通りすがる全てが私の好みのイケメンに美女。

先生までイケおじだし。


そうか。これは眼鏡のせいか。

やっぱりそうか。

そのせいだ。


神様が私にプレゼントしてくれたんだな。

そう思う事にしてみる。


1人ひたすら状況と戦っていた。


『乃亜ーー!ね!乃亜ってば!』

桃が私の名前を何度も呼ぶ。

『あ、ごめん!桃おはよう』


『かっかっ可愛いすぎるーー!!!』


桃につい言ってしまった。


『え?どしたの急に!そんな大袈裟な!

昨日髪切ったんだ!ありがとー乃亜!』


『あ!梓と時寧、湊だ!おはよー』


いつもと変わらない6人。

私だけが変なのは言うまでもなく。


『映画どうだった?』


『んー俺はイマイチ。乃亜は楽しいって言ってたよ!な?乃亜』

 

昴と湊が私を見ている。


お願いです。2人で私を見ないでください。

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