kamu

ちい

ジェームズは僕さ

信号待ちのいつかの時間の

妙にちぐはぐな紙芝居は

一度取り落として拾ったかのような

水たまりに浸かって色落ちしてしまったかのような


愛せない曖昧を孕んでいるような

取り返しのつかない夢を見ているような

そんな違和感を惜しみなく振りまいて

ここにいる僕を無かったことにしてしまう


僕を追い立てるのがお好きなようで

僕を惑わせるのに夢中なようで

お生憎様、言われずともわかることさ

カラスが鳴くより容易いこと


ロックスターは存在しない

クリームメロンも存在しない

背泳ぎするリスもいなければ

炸裂するトマトすらここにはいない


ぽろぽろと零れて床に散らばる紙くずを

集めてこねて隙間につめて

せめて信号が変わるまでは

笑みの絶えない時間であるように


君は白線を踏んで歩く

僕は白線を踏まないように歩く

はたしてジェームズは何を踏むだろう

渡るべき信号の色すらも、

もはや見失ってしまったようだ


響くチャイムは遠く聞こえる

いつからかでなくいつまでも


はしゃぐ雑踏は遠い過去に消える

君だけが先に進んでしまう


君がみているあの人になりたい

君にとってのあの人になりたい

体を変えて

心を変えて

僕のすべてを取り去ってしまえば


戯言戯言世迷言

君が笑ってくれるなら惜しくは無い


移し替えてしまうしかないならば

片側しか空いていないのならば


僕がその場所に居座ることを

誰も咎めさせはしないだろう

僕が僕を捨て去るならば

決して君も俯かないだろう


ジェームズは僕さ

だから僕をみていればいいのさ

君の満足はそれで満たされるし

僕の満足はあふれてやまないだろう


ここにある分でジェームズは終わり

あとは何をひっくり返そうと

どこからだって

誰からだって

過去を未来を引きずり回そうとも

何も変わることは無いのさ


だからこっちを見て

僕と同じ言葉を交わして

ジェームズは僕だ

足りないものなんて何も無いはずさ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る