民衆の蜂起で処刑された第五王子は家族を救うために過去へと舞い戻る─なんか死に戻ったら日本人だった記憶が戻ってるので前世知識で余裕です
Recent(れむれむ)
プロローグ
ーーー征服歴1285年ボーロード王国ーーー
「いたぞ! 第五王子だ!!」
「あいつが最後の王族だ! !」
「捕まえろ! あいつの親兄弟と一緒に縛り首だ!!」
どうしてこうなったんだろう。
僕、ボーロード王国第五王子ツークは、内乱で見る影もないほど荒廃した王都の裏路地を逃げ回っている。
暴徒達のほとんどは、かつてお忍びで歩いた城下で出会った人達だった。だが彼らの顔はやつれ、その目は憎悪でどす黒く濁っている。
僕もまた、服はボロボロで手足は擦り切れ、血が滲む。
「はぁ…ぜぇ…ぜぇ……」
「殿下、お早く!!」
既に息も絶え絶えな僕がなんとか走っていられるのは、僕の手を引いてくれるリノのお陰だ。
僕の専属侍女として幼い頃から一緒にいる彼女だけは、民衆が反乱を起こし家臣たちすら王家を見限る中で共にいてくれた。
「ぜぇ……リノ、君だけでも逃げてくれ…僕はもう…」
「だめです殿下、まだ逃げ道は…っ!?」
僕を励まそうとしたリノの言葉が途切れる。
そして立ち止まった彼女の目線の先を追い、その理由を察する。
「くそぉ…」
「殿下、私の後ろに…」
先程まで自分達を追いかけ回していた粗末な武器の暴徒とは異なる立派な鎧の騎士達が、道を塞いでいる。
「イワギマ侯爵!」
「これはこれは、邪悪なる王家の第五王子ツーク殿。残念ですが、もう逃げ場はありませんよ?」
立派な口髭をいじりながら、その目に冷たい色を称えたかつての
「さあ大人しく降伏を。そうすれば貴方の大切なメイドの命は保証いたします」
「っ、駄目です殿下!」
「………分かった。好きにしろ」
引き留めようとするリノの手を振りほどき、僕は降伏した。
もう疲れた。もう、終わりにしたかったのだ。
手枷を嵌められ引きずり出された広場には、一斉蜂起した民衆達と彼らを扇動した
そして特別に作られた処刑台には、既に僕の大切な家族が揃っていた。
「ツーク、お前まで捕まってしまったのか…」
「ごめんなさい父上…」
「いや…よい、良いのだ……これが、我らのさだめだったのだ…」
僕の父、このボーロード王国の正当な王であったレーン3世は悲しそうに首をふる。
そして興奮する民衆の前に、僕を捕まえたイワギマ侯爵が現れた演説する。
「我が民達よ、悪逆なる一族は今ここに捕らえられた! 彼らは飢饉のおり、諸君が飢える中で飽食の限りを尽くし、自らの豪勢な食事の為に諸君らの僅かな蓄えさえ奪い取った!」
「「「 肥えすぎた豚共に制裁を!!」」」
「飢えた諸君が盗賊に身を落とした時はどうした! 自分達を棚に挙げて、諸君らの同胞を悪と断罪し処刑しようとした!!」
「「「二枚舌の狐共に制裁を!!」」」
「あまつさえ、諸君らを救うために立ち上がった我らを、卑劣なこの者達は討ち滅ぼそうとしたのだ!!」
「「「邪悪なる王家に正当な裁きを!!!」」」
イワギマ侯爵の演説に民衆が酔いしれている。
「私は宣言する!! 圧政者ボーロード王家亡き後、新たな王たる私は諸君らに尽くすと!!」
「「「新王万歳!! 正義の王!! 真なる王の誕生に祝福あれ!!」」」
その宣言は、民衆に後押しされた僕らへの死刑判決だった。
「せめて、私の死が民の為にならんことを…」
父王レーンは命乞いする事なく首を刎ねられた。
「すまないな…皆、すまない……」
第一王子アーリは家族に、そして何よりも民衆に謝りながら首を刎ねられた。
「くっそぉー! 殺す! 殺してやる! 一人残らず殺してやるからなてめぇらぁぁぁぁ!!!」
全身を縄で拘束されながらも暴れ回った第二王子ルーアンは、全身を兵士達の槍に貫かれ、失血でマトモに動けなくされた後に首を刎ねられた。
「呪う!呪ってやる! 絶対に、私は絶対に貴様らを許さない!!」
第一王女タルミナは、その整った顔立ちを憎悪に染め上げ血走った目で民衆達を睨みながら首を刎ねられた。
「神よ…偉大なる唯一神よ、これもまた私達への試練だと仰るのですね?」
信仰心の厚い第三王子イタックは、ひたすら十字教の神に祈りながら首を刎ねられた。
「いやだ、死にたくない…死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁ!!!」
「離して!このっ嫌っ嫌イヤイヤいやいやぁぁぁぁ!!!!」
双子の第二王女ムイナと第四王子アムールは、無様に泣き叫び最後まで抵抗しながら首を刎ねられた。
「ヒッく…ゴメンナサイ…ごめんなさいゴメンなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
第三王女ダイアナは壊れたようにただ誰へとも分からない謝罪を続け、そして虚ろな目のまま首を刎ねられた。
刎ねられた首は順番に並べられ、民衆達がそれを嘲笑いながら石を投げている。
処刑が娯楽なのは知っていたが、これほど…こんなにも醜悪な催しだったのか。
僕は、きっとダイアナ姉さんと同じように心が壊れてしまったんだろう。ただ淡々と、ほんの少し前まで愛すべき人々だと思っていた城下の民達を眺めている。
「さあツーク殿下、貴方が最後です」
「……最後まで、貴殿は僕を殿下と呼ぶのだな」
「ええ。こうして惨めに民衆の前で処刑されるのまでが王族の務め。それを全うしている方には敬意示すのは当たり前の事です」
それが皮肉か本心か、僕には分からない。
「ああそうそう、最後ですのでこれをお渡しします」
「これ…は!?」
それはところどころ血で汚れた、あまり高価ではないリボンだった。何の変哲もない、だがそれは僕にとって何よりも価値がある!!
「このリボンはリノの…っ僕が、僕がリノに渡した物だ!! 何故貴様が持っている!!!」
「殿下を救出しようと我々を襲撃し、撃退された彼女が遺して行ったものです。そしてそれは、死ぬ殿下が持つべきものでしょう」
その顔には、憐れみと確かな敬意があった。
「彼女の忠義は本物でした。ならばせめて、忠義を受けた側はその事を知った上で責任を果たすべきでしょう」
「巫山戯るな!! お前達が…国を滅茶苦茶にしたお前達がそんな戯言を!!!」
「ええ…殿下にすればそうでしょう。我々を、そして民を恨みながら逝きなさい」
そう言って、イワギマ侯爵は踵を返し処刑人に命じる。
「殺れ」
短い一言で、僕は何人もの処刑人に抑え込まれる。
「許さん!! 許すものか!! 覚悟しろ、例え死んだとしても必ず!! 必ずだ!! 必ず貴様らに復讐してや……る?」
血涙を流しながら叫ぶ僕の首に斧が振り下ろされる。
そして視界がくるくると周り、回る世界が奇妙なほどゆっくりと動いていて───
(ああ…思ったより痛くない──)
頭が地面を転がる感触が、僕の最後の記憶だった。
征服歴1285年、ユーシア大陸中央から北西に外れた地に存在した小国ボーロード王国は滅んだ。
苛政に耐えかねた民衆と、それに同調したイワギマ侯爵を中心とする貴族連合が王都を短期間に陥落させ、王とその子ども達を尽く処刑し革命は成立した。
その後、新生イワギマ王国は他国からの侵攻を受け、民衆の支持を急速に失い僅か2年で崩壊する事となる。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ーーー征服歴1275年 ボーロード王国王宮ーーー【2】
「……………あれ?」
そして気づいたら僕、ツーク・ボーロードは懐かしい王宮の庭に佇んでいた。
〜後書き のようなもの〜
腹黒はイワギマ侯爵ではない
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