冒頭の情景描写から物語に引き込まれていく。文子の愛らしさ、純粋さが伝わってきた。そして、提出された小説。ついつい小説を書いていると、言葉を尽くすほうに集中しがちかもしれません。でも、そうではなくて、読者を一撃で震わせるような、そんな切れ味の鋭いものを目指したほうが良いのかも。そんなことを思ってしまいました。面白かったです。
どうやって書くのか。主人公と同じく疑問に思いながら読み進めると、あっと驚かされた。戦後を描いたからこその、この作品だと思う。最後で『嗚呼』という言い回しも、私的にはとても効いた。あっぱれ。
短い文字数の中に、小説というものに込めた想いがぎゅっと詰まっているようでした。小説を普段書いている身としては、どうしても技巧や構成などに気をとられがちなのですが、これは小説の本質を突いていると思います。この気持ちは忘れてはいけないなぁ。