第9話

そう言って不満そうな顔をした。


「それならあなたが考えてよ」 彩が応じた。


通雄は暫 く考えていたが、


良い名前がちっとも浮かばない。


変な名前だけどしょうがないか、


内心ではそう思ったが顔には出さずに


「そうだね、ルルか良い名前じゃないか」


などと言ってしまうのだった。


 


こうしてルルは家族の一員になった。


マルチーズの特質なのかそれとも


個体差なのか兎に角手が掛からない。


ケージの中にトイレシートとベッドを置き


給水器を取り付けた。


ルルは特別何も教えないのにちゃんと


ケージの中のトイレシートで用を足し、


夜は啼きもせずにベッドの中で寝る。


 


毛が抜けないのには驚かされる。


犬というものは毛が抜けるものと、


思っていた彩は掃除の手間が全然


掛からないので大喜びだ。


普通犬は一年に二度毛が生え替わる。


 


その時に大量に毛が抜ける。


特に柴犬のような犬は抜け毛が


多くて嫌がる人もいる。


マルチーズは毛が生え替わらずに


伸びるので抜け毛があまり無い。


その代わりブラッシングを 、マメにしないと大変なことになる。 月に一度はトリミングをしなければいけないので大変だ。


 


それから個体差なのか餌を余り食べない。


体が小さいから余り食べないのか、兎に角食が細い。


以前彩の家で飼っていた犬は、意地汚いくらい餌を食べた。


食事の時間になると、食器をガラガラと


鳴らして餌を催促した。


 


彩が餌をあげに行くと飛びついたりしたものだ。


そんなことが全く無いので逆に心配になった彩は、


動物病院にルルを連れていって診て貰うことにした。


狂犬病の予防注射もしなければならないし、


ワクチンもあ と一回しなければいけなかった。


 


彩は近所の評判の良い、


病院を探してルルを連れていっ た。


病院の先生は人の良さそうな


声のやたら大きい年輩の人だった。


色々と診察をした後で、


「大丈夫、大丈夫お腹がすけば食べるから」


そう言って笑った。


その大きな笑い声を聞くと彩は心の底から安心した。


「良かった。ルルちゃん、何でもないんですって」


彩はルルにそう話しかけた。

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