第4話

最初のうちは、二人して 病院に行って診て貰ったりした。


二人とも体に異常は見つからず、 健康そのものだ。


 


子は授かりものとは、 良く言ったものだ。


望まなくても出来る事も有れば、


幾ら望んでも出来ない夫婦もいる。


 


今では二人とも諦めた訳ではないが、


そんなに焦らずに、


そのうち出来るだろう位に思っている。


 


そんなこともあって、


数年前から彩 は犬を飼いたがるようになった。


近くの大きなスーパーに行くときは、


必ずペットショッ プを覗いている。


 


でも、二人して暇つぶしの格好でペットを


見ているだけで、本当に飼うつもりが


有る様には思えなかった。


 しかしその日は違っていた。


 


いつものように 二人で、店の中に入っていく。


ガラスのショ ーウインドウが並んでいる。


右端の一番下のショーウインドウの中に、


一匹のマルチーズ がいた。 生後二ヶ月の雌だ、


他の子犬と違って ガラスの外をじっと見つめている。


 


 普通ペットショップの子犬は、


自分の世話をしてくれる店員の方を


見ていることが多い。 後は大抵寝ている事が多い。


でも、その子犬は違っていた。


彩が顔を近づけると、 彩を子犬は見つめ返してくる。


 


普通子犬は、外の知らない人間には、


あまり興味を示さないものだ。


だからこちらを向かわせようとして、


ガラスを叩いたりする客もいる。


 


良くペットショップを訪れる彩には、


その辺の所は、良く分かっていた。  


一寸興味を引かれその子犬をじっと観察してみる。


勿論見かけは普通の二ヶ月の子犬だ。


 


しかし自分を見つめ返す瞳は、


理知的で感情豊かな


強い光を放っている様に彩には思えた。


 彩は店員を呼んで、その子犬を抱かせて貰うことにした。


店員は慣れた手つきで、その子 犬を抱いてくると、


「可愛いでしょ」と言って彩に渡してくれた。

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