屋根の上の黒い影

夢のマイホームの完成 嬉しいはずだが喜べない

何年ぶりに見ただろう 屋根の上にいる黒い影

最初に見たのは 俺がまだ小学生の頃

いつもの帰り道を歩いていた時 どこからか視線を感じた

どこだろうと 周りを見渡した時

1軒の家の屋根の上 黒い影がいるのが見えた

(あれは向かいの家)

泥棒？ それにしては異様な姿

じっくり見てやろうと 家の前まで行く

屋根の上の黒い影はハッキリ見えたのだが

人のような形をしているが 顔がない

ちょうど庭にいた その家のオジサンが俺に声を掛ける

「坊や どうした？ 家に何か用か？」

「オジサン 屋根の上にね 真っ黒な人がいるの」

俺は何気なく答えてしまった

そんな俺の言葉でオジサンは屋根の上を見て

「坊や あれはカラスだね 見間違えたのかな」

そう言いオジサンは俺を家まで送ってくれた

翌日 オジサンは亡くなったと聞いた

俺を送ったあと倒れたらしく 家の前で発見され 死因は心臓発作と聞いた

次に黒い影を見たのは嫁の実家に挨拶に行った時

家の前に着いた時 視線を感じて 屋根の上を見ると黒い影

出迎えてくれたお義母さんとお義父さんが

俺が屋根の上を凝視しているのを不思議に思い

2人は俺の視線を辿り それを見てしまった

その夜 嫁の実家が火事になり

お義父さんもお義母さんも亡くなってしまった

そして 今 俺の建てたばかりの家の屋根の上に黒い影

あの時とあきらかに違うのは 目だけだが そいつの顔が見えたこと

その目は大きくギョロっとしていて血走っていた