とりとめもない話がしたいです

糸花てと

第1話 無色の世界

 普段より人が多い廊下。今回だけ、文化祭という日だけは、私服を着てきても許される。

 文化祭は楽しい。創作において文化祭というイベントは、とても有意義に描かれている。クラスメイトが笑っているし、楽しいイベントなのは間違いないのに。私は追いかけるのに必死なの。


 クラスの出し物は喫茶店で、部活の活動がある生徒は、喫茶店での接客はしなくていいと優遇される代わりに宣伝に力を入れなきゃいけなくなった。

 私が選んだ漫画研究部、始めは文化祭の出し物はやらない方向だった。それが……うちの先輩とパソコン部の先輩が友達で、一緒に何かするという勝手にいろいろ進んでいくことに少し苛立ちはあったものの……。今回みたいな事には心底ホッとした。


 漫画研究部では各々好きにひとつだけ作品を創る。パソコン部はいいねを押せたり、匿名でコメントを残せるアプリを創る。

 学校内で使えるだけで、既存のSNSとやり方は同じみたい。

 自分の趣味が出せる場所と思って、部活に入った。文化祭でパソコン部と協力して、さらには見た人が感想を残していく。

 個人で好きにやっていたことが、本当にいろんな人に見てもらえる。考えただけで緊張するけど、嬉しくなった。


 漫画研究部。名前の通り、漫画を描いてる部員がほとんどで、一枚イラストなのは私くらい。

 QRコードで読み込んで、みんなの視線は手元のスマートフォン。誰の作品の前に人が多いかは、見ただけでは分からない。


 部員から手招きされて、黒板の前、教卓へと近寄る。端末を覗く。

「反応、来てるよ」

 その言葉が素直に嬉しかった。いいねの数が二桁あった。それだけで十分満たされた。匿名で残せるのに、これは本当の名前?


〝SNSのプロフィール画像、この人に描いて欲しい〟


 一件だけ。同性? 異性? どんな人? ひとつだけ届いた、コメント。落ち着かなくなってくる鼓動。足元が、気持ちがふわふわと、楽しくなっていく。


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