たまにはいきぬき
第5話
「あれ、今日2人来てないのか?」
「寝不足らしくて今日は来ないらしいです」
「ふうん、珍しいな」
壬黎さん達がいないと、連合のリーダー達と話すのは少し緊張する。
た ま に は い き ぬ き
「それじゃ紅龍の奴等にとっては今日は息抜き出来る日だな!」
「そう、ですかね?」
たまに未蘭さんは馬…ぶっ飛んだ事を言い始めるからな。こういうフォローするのも意外とさりげなく壬黎さんがやってくれたりしてたし。
苦笑いしていれば和叉さんが馬鹿じゃねェのお前と未蘭さんの頭を叩いていた。
この人も壬黎さんを前にするとデレデレだから少し可哀想になる。
間近で白夜さんがどんだけあの人に振り回されながら突拍子も無い行動を仕掛けているのを見てるし。あの人も必死だよな、マジで。その癖に自分の気持ちを意地でも言わねェし。
「聖夜、お前監視の仕事は大丈夫なのか?」
「さすがに最近ずっとあれ見てる状態だったから白夜さんに代わってもらった」
「白夜さんよく変わってくれたな」
「幹部時代はあれずっと白夜さんがやってたらしいから少し嫌がられたけど…壬黎さん学校に来ないで溜まり場行くと思うっつったらやってくれた」
「壬黎さんだしに出来るの俺達の中じゃお前ぐらいだわ」
軽く笑う紅龍のメンバー。もともとの構成人数が少ないからかクラスには紅龍は俺とこいつだけ。
最近壬黎さん何か忙しそうだもんななんて言われて思わず頷く。普段がマイペースな分忙しそうにしているとみんな何かしら思う部分がある事をあの人は知らない。
「おーい聖夜!勉強教えて!」
「有斗さんの口から勉強って今でも変な感じっすね」
「夏休み無いのは嫌だからな!」
未蘭さんは息抜きと言ったけど全然息抜きなんて出来ねェ。期末控えてるし。つーかその息抜き潰しに来てんのこの人達なんだけど。
有斗さんは意外と言われればマメに頑張るタイプなようで、永谷さんの授業以外はこうして教える事が多い。
玲苑さんは空き時間にコツコツ派でよく放課後や休日なんかに連合の溜まり場に呼び出される。
一番厄介なのは未蘭さんだ。あの人はフラッとどっか行ってしまうから黙って机と向き合ってねェ。そう思えば俺って案外忙しいのかもしれない。
「有斗さん、未蘭さんどこ行きました?」
「あー…あいつはどうせ他の学科の女引っ掛けてるだろ」
「期末、大丈夫なんすかねェ」
「このままフラフラしてるとそのうち夢馬か壬黎が監視して勉強すると思うけどな」
あの2人の圧力はやばいしスパルタだし、容赦なく拳が飛んでくるから俺はまだ聖夜に教えてもらった方が安全だと思うんだけどな。ガリガリとノートに数式を書いていく有斗さん。
未蘭さんってドMなのか?
確かにしょっちゅう夢馬さんに冷たい目を向けられてるし、壬黎さんには拳を叩きつけられているところを見る。
「お、これはわかるぞ!」
「マジっすか?この間まで分からなかったのに」
「まァやれば出来る子だからな!俺は」
「自分で言います?」
元々数学は嫌いじゃないしと予想外のセリフが有斗さんから飛び出てくる。余程驚いた顔をしていたのか思い切り笑われた。
同い年と言えどやっぱりなんかこの人は未蘭さんより余裕があるように見える。
「聖夜、有斗。そろそろ中断して飯食いに行くぞ」
「食いに行くってどっか行くんすか?」
「食堂に行ってみてェって玲苑が煩いから食堂行く」
丁度昼の合図のチャイムが鳴り食堂を楽しみにしていたらしい玲苑さんがガタガタと席を立つ。
そう言えば珍しく亜久里さんと海音さんも居ねェな。どうせケーキバイキングにでも行っているんだろうけど。
いつだったか碧兎と蒼狼の人達があの2人の食べっぷりをみて吐きそうになったって言ってた。
そう考えていればお前は行かないのか?とお目付役で行くであろう大雅さんに声をかけられる。
「…今日は大人しくしてます」
「本当壬黎と白夜がいないと大人しいよな」
「いや、あの2人に振り回されてるだけだろこいつ」
和叉さんと大雅さんにそう言われるけど…いくら連合と言えど他のチームのお偉いさんにあの2人と同じ態度が取れるわけがねェ。
4人を見送って後ろを振り返れば紅龍のメンバーがポイっとパンを投げ渡してくる。俺が前に好きだって言ってたやつ。
「お前どうせそれじゃ足りないだろ」
「足りねェ」
「購買行くがてら暑いし水遊びしね?」
「壬黎さんいないから思い切り羽伸ばし始めたなお前」
分かっているのいないのか。お前が羽目を外したらストッパーは俺になるんだけど。
あ、考えただけで胃が痛くなってきた。
少し胃をさすっていれば腹減ったのか?なんて見当違いな事を言われる。
「早く行こうぜ!」
「分かったから引っ張るなよ」
「うぇーい!水遊びうぇーい!」
「はしゃぐな恥ずかしい」
購買に寄り食料を調達してメンバーと比較的面識がある連合の奴何人かで外に出れば丁度ホースが転がっている。
にやりと笑い合う奴等にすごく嫌な予感がした。水遊びって誰か水風船とか持ってるわけじゃねェの?
「おら!くらえ!」
「ブッ!」
「こんな事もあろうかと俺水鉄砲持ってるもんねー!」
「めっちゃ用意いいじゃねェか!」
待て待てお前ら、これはまずいんじゃねェか?羽目外しすぎじゃねェのか?
ホースを使い水を掛け合い、更には水鉄砲まで持ち出し打ち合うなんて想像もつかない。
しかもかわいい片手のやつじゃなくてでかい有名なテーマパークで夏のイベントに使われてそうなやつ。
…なんて、止めてもどうせ聞かないしまァいいか。俺日頃頑張ってるし。
「聖夜も飯食ったら早く来いよ!」
「わかったからちょっと待ってろって。ゆっくり食わせろ」
「早くしないと飯に水ぶっかけるぞ!」
「お前飯の恨みは怖ェからな」
そう言いながらもしこいつらが水をかけてきてもなんだかんだで参加してしまうと思う。
こうやって羽伸ばして遊べるのも滅多にねェし。いつも音楽室に連行されるし。
「おい、俺にも水鉄砲貸せ」
「やっと来たな聖夜!くらえー!」
「冷ェ!」
この後凄い怖い笑顔で夢馬さんがきて凄ェ怒られたのはまた別の話。
(…何やってるんですか、お前らは)
(羽伸ばしです!)
(この事壬黎知ってますからね)
(…マジ?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます