-War 3- 不発弾 Ⅲ

【Phase3:カレン・ライリー】


「くっ…もう弾が……」


「ドローン破損!こっちももう手がありません…!」


「鉈も壊れかけ!てかカレンのランチャーは!?」


「ごめん…さっき破壊されちゃったわ…」


「遊ボ?やだやだ…一緒ニ…」


「くぅっ……!」


「ソフィー!」


「ここまで…ね……」


「待たせたね…!随分と休ませてもらっちゃったみたいっすね!」


「カレン!?」


目が覚めた


ただ目が覚めただけじゃない


まるで今まで眠っていたみたいだ


今なら分かる


私が何の為に戦うのか


私が何の為に生きていくのか


「あとは私に任せるっす,寝てた分は働くっすよ」


「武器も無くて一体どうするって…」


武器ならある


博士が造ってくれたこの身体が,与えてくれた魂が!


「あグ?あ…?」


「効くっしょ?ツギハギ」


「嘘…素手で…」


ツギハギのベースは何人もの融合した人間だ


ならばするべき事はその全てを殺す事


「あは…アヒ…」


「これは……」


「気をつけてカレン!そいつアメーバみたいに身体を再生させてくるわ!」


「だったら…!」


ランチャーはない


それならこうするまで!


「うわっ!?」


「カレンっ!?」


弾頭で直接ぶん殴る


当然そんな事をすれば爆発は必然


「いつつ…こんな頑丈な身体にも感謝っすね…!」


こんな事で私の身体は動かなくなる程脆くない


私の異能体としての能力


闘争本能とは真逆に私が増強されたのは防衛本能だ


身体そのものが頑丈なだけではない


本能がそうさせる


爆風を真正面から受けている


だがそれは見た目だけだ


身体が頑丈なのに加えてもう1つの力


異能体が造られた理由


異能


不完全ながら私には異能としての力が宿っている


自分の身体を保護するように一種のシールドの様な物が存在している


爆風を受けて尚平然としているのはその影響だ


だがそれも万能ではない


銃弾を弾いたり相手の拳を防ぐ…なんて事は出来はしない


だが爆風の様な間接的な衝撃であれば威力を消せずともかなり軽減する事が出来る


身体の頑丈さと合わせて私が立っていられる理由だ


「ここからはタイマンっすよ,どっちが先に倒れるか試してみようじゃないっすか!」


「悲しイ…1人……どうシて…」


「1人?そんなたくさんくっ付いて何言ってるんすか?それともバケモノみたいな存在が自分だけだと思ってる?」


「意味……?分かラな………」


「バケモノが1人だと思ったら大間違いっすよ…!!」


拳を握り思い切り殴り飛ばす


「身体が……再生していない……?」


「アメーバ,確か微生物がベースの異能体だっけか?欠損した部位を再度構築して元に戻る…けどこれには欠点があるんすよ,体組織が再生する際には細胞が活性化してる必要がある,それなら細胞が悲鳴を上げる様な状況…この炎に囲まれた状態なら再生は不可能っすよ!」


あの記憶の中で見た1冊の本


あの中には今まで博士が作ってきた異能体の全てが記されていた


欠点が何なのかも事細かに!


「た…スケ……」


「…………」


段々と融合した人間達の数が減ってきて自我がしっかりとしてきたみたいだ


私が出来る唯一の救う方法は殺すしかない


せめてもの償いだ


博士の造り出した異能体


その全てに終止符を打つのは私だ


私でないといけない


勝手に造られて


勝手に殺されて


その気持ちを痛い程理解出来る


だからだ


同じ異能体として


他の誰でもない私が全て背負うんだ…!


「…………」


「…終わったっすね……」


「え……なに……あれ………」


「生身で身体を…」


今まで使っていた異能


私はこの日初めて攻撃へと転用した


爆風を逸らすくらいのシールドでもそれを防御だけでなく攻撃に使う事だって出来るはずだ


そしてそれは正しかった


どうやったのかは自分自身にも分からない


不思議と頭にあったのは博士が昔教えてくれた私の名前についてだった


"ライリー"


勇敢という意味を持つこの名前は戦士として,そして博士が私が平和な世界で生きるまでの戦いを案じて付けてくれた名前なのだろう


勇気が湧いてくる


必ずやれると


「…おやすみなさい,元人間だった人々達…」


私は人間じゃない


バケモノでもない


異能体だ


私は異能体でなければいけない


博士は私の事を人間として扱ってくれていたが私にはまだその資格はない


平和な世界


それを実現するまで私は異能体のままだ


「カレン……」


「ん,ソフィー……終わったっすよ」


「この馬鹿!勝手に倒れて勝手に1人でカッコつけて…あんたが何考えてるのかは私には分からない,けど仲間じゃないの!?」


「…それは分かって…」


「分かってないわ,今の戦いを見てて分かる,1人で抱え込むな,少しは仲間を頼りなさい」


「そうです!私達だっています!」


「そうよ,体を交えた仲じゃない」


「……!ありがとうっす…!」


そうだ


私は1人じゃない


支えてくれる仲間


共に戦ってくれる仲間達がいる


そしてその仲間達と共に目指す


平和な世界を


その為に戦争を終わらせる戦争屋として戦うんだ


「さて…なんか終わったらお腹空いた………っす…ね」


「カレン!?」


あぁ


なんだか酷く疲れた


眠い


このまま眠ってしまいそうだ


「……………」


『……………』


2日後/TE拠点/医務室


「うーっす,あのバカまだ起きない?」


「起きてねぇよ」


「まったく,カレンは寝坊助だね」


「荒川,てめぇの傷はもう治ってる,さっさと出てけ」


「酷いじゃないか,誰の所為で刑務所の中に入って乱暴されたと想ってるんだい?」


「自業自得だ,文句言うなら乗せたルーシーにでも言え,そしたらまた治してやる」


「私に死ねって言ってる?」


「はぁーったく…最近は依頼も立て込んできてるからなぁ…なんだかんだカレンがいないとスムーズにいかない事もあってね」


「普段爆発ばかりさせてるけどなんだかんだで貴重な人材だからね,カレンは」


「そもそもソフィーの話じゃロケランの弾頭で殴りかかったんだろ?そんな事して生きてる事が不思議だ,寧ろ目立つ傷がない,ただの出血多量で意識失ってただけだ,とっくに目を覚ましてもいいはずだ」


「Vでも原因は分からず…か」


「私の専門は人間なんでな」


「う〜ん………」


長い間眠ってた気がする


ここは…


医務室みたいだ


そうか


あの後私は倒れてしまったんだろう


じゃなければ私が医務室のベッドで寝る事は許されない


そもそも立ち入りすら禁止されているのだから


「よぉ目ぇ覚めたか,覚めたんならさっさと出てけ」


「相変わらずっすねぇ…患者にはもっと優し……う"っ……ぐぅぅぅ…」


「あ"?おいなんだ!?どうした!?」


「は……ら……」


「腹?腹が痛むのか!?」


「腹…減ったっす………」


「…咲夜,荒川,食堂からありったけの飯持ってきてやれ」


話に聞けば私は丸2日間も眠っていたらしい


そりゃこれだけ腹が減るのも当然だ


「咲夜ぁ!ハンバーガー食べたいっす!あもあままむ」


「うるせぇ!!!口に物入れて喋んな!カスが飛んでんだよ!!!」


「いやぁ〜しかし…すごい食べっぷりだね…」


「異常なくらいにな,てめぇ病み上がりなんだから落ち着いて食え,胃が受け付けねぇぞ」


「んもも!むぐぐぐ!」


「2度と口開けねぇ様にしてやろうか?」


「まぁ今日くらいはいいじゃん,はいハンバーガー」


「ぷはぁ!やっぱこれを食べないとっすね!」


「ジャンクフードなんか体に悪ぃだろうに…」


「人肉の方が体に悪いっしょ?」


「…………」


「珍しい,Vが論破されてる」


「はっはっは!やっぱりまともなのは私だけみたいだね!V!」


「おい荒川,少し泳ぐか?」


「ちょ…冗談!冗談だって!!咲夜!!助けぇぇぇええ………」


「はぁ…ったく相変わらずだ…で…カレン,暫くは休んでていいぞ,動ける様になってから任務に戻ってくれ,そんじゃ」


相変わらず拠点は騒々しい


まぁ静かだった事なんて滅多にない


これが私の日常なんだ


私はそんな日常が好きだ


けれどこんな日常が世界では失われつつある


だからこそ私達の様な傭兵が必要な時代なんだ


「けふぅ……食った食った……さて……もう一眠りしたら戻るっすかね…!」


たまには羽を伸ばすのもいいだろう


遠くから聞こえるVの怒号と荒川の悲鳴を聞きながら私はベッドに再び横になる


こんな日常こそが平和な世界と呼べるんだろう


私は失いたくない


その為に今一度決意を固める


TE隊員として


戦争を終わらせる戦争屋として


異能体,カレン・ライリーとして


博士が願った平和な世界を実現させると


-Next war-

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