イリアットの特異体

すずか

第1話

 ──それは夜空を見ていると狂わされそうなぐらい美しい夜の事だった。

「ミラ君、きみを助けてあげよう」 

 相手は人間……ではなく、人心ひとごころと呼ばれる人間そっくりな存在だと直感で分かる。そして、六十代半ばくらいの男性の容姿をしている。帽子を被っているが、髪は少し見え白色で瞳は水色だ。

「……本当に?」

 可愛らしい小さな少年、ミラ・クレイリットは答えた。

「本当だよ。きみの苦痛を解決しよう」

 ミラは苦しんでいる。

「……おじさんの名前は?」

 彼は屈みながら答える。

「ガント・マイナル。開発者をやっていってね。きみを助ける物を持っているよ」

「でも、僕を殺そうとしている人はいつも、そんな事ばかり言うよ」

 ミラは警戒心を持つ。

「大丈夫。信じてもらうために一週間、きみを守るから」

 少し、その言葉でガントを信頼してしまう。それでいいのだろうか?

「これは取引でもある。おじさんの言葉を信じる代わりに、きみは苦痛から解放される。分かるかな?」

「うん……」

 小さくても取引の意味ぐらい分かっている。それよりも信じていいのかが問題だ。でも、このガントを信じるしか道はないのかもしれない。そう思うと答えはすぐに出た。

「おじさん、分かったよ。取引……しよ」


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