生まれた時から

 蓮条が生まれたのは、今からだいぶ前

 男性のファッション雑誌のモデルをしていた父と元ミス〇〇の母の次女として生まれました

 今ではSNSが日常化してますが、その当時はスマホなんてものも無かった時代なので、雑誌のモデルをするような父と近所でも有名な美人な母は、結構目立っている夫婦だったそうです


 父は『内臓逆位』と言って、生まれつき臓器が反転している人で、通常心臓が左寄りにありますが、父は右寄りなのです

 今はCTやMRIなどの検査で診て貰えるから何とかなってますが、昔は熱を出して受診しても『心音がおかしい』と治療そのものがなかなかできなくて、何度も死の淵を彷徨ったことがあるそうです

 そんな父からの遺伝なのか分かりませんが、私は生まれつき骨に異常がありました

『股関節の形成異常』というやつで、生まれつき大腿骨が1本余分にあったのです

 なので、骨が余分にあることで骨盤に骨が嵌らず、股関節脱臼の状態で生まれました

 女の子によくある『先天性の股関節脱臼』という症状で、骨の成長と共に、自然と嵌ると言われていた時代です

 ですが、私の場合は骨が余分にあるのですよ

 生後半年が経っても寝返りすら出来ず、1歳を過ぎてもお座りすら出来なかったそうです

 そりゃあそうですよね

 脱臼して日々激痛がしているわけで、大人しく座ったり、歩いたりなんてできませんよ

 毎日のようにずっと泣いていて、声がカスカスになるくらい泣き腫らしていたそうです

 大きな病院を20くらい廻っても、『ギプスをすれば…』『そのうち…』などと言われて、どうすることも出来なかったそうです

 1歳半を過ぎてもお座りができない状態で、県立の医大に紹介状を書いて貰って受診しました

 すると、医師からこんなことを言われたそうです。

『股関節と大腿骨の骨頭部分が壊死しているので、すぐに左足を切断しましょう』と


 生まれてから治療らしい治療もせず、そのうち治るからと無理やりギプスをしていただけの私の足は、既に腐っていて、医師も匙を投げるほど酷かったそうです


 当時はCTがまだ全国的に普及していない時代で、一部の大学病院でしか検査機械が無かったのです

『女の子なので、どうにか、切断だけは……』と、祖父母が医師に泣きついたそうで、医師からの返答が『とりあえず、手術してみて、状態を確認してから決めましょう』というのも

 レントゲンでは分かりかねると医師がいうので、すぐさま手術をすることに


 現代では難病と言われる、『大腿骨骨頭壊死症』というやつになっていたのです

 たぶん、生まれた時は壊死してなかったはず

 1年半も放置していたからだと思います


 最初の手術は8時間にも及ぶ大手術で、余分な骨と壊死している部分を全て取り除き、なんとか切断せずに済みました

 左の大腿骨が右よりも3センチ以上短い状態ですが(現在も)、無理をしなければ自力歩行出来ますし、状態がいい時は軽い運動も出来ます

 ただ、骨盤に嵌る骨頭部分をスパーンと切ってしまったので、引っかかる部分がなく、急な動作(スタートダッシュや立ったり座ったり)をする時に亜脱臼になりやすいです

 まぁ、切断して失っていたかと思えば、激痛も我慢できますし、数日歩けなくても全然平気です


 私の幸福度ってかなり低めなのかもしれませんけれど、命があるということが当たり前なのではなくて、今日という日を過ごせることが奇跡だと思っています

 だから、日々激痛に襲われたとしても、痛みを感じられるという幸せを噛みしめて、今日も元気に過ごしてます

 ちなみに姉と弟がいますが、2人とも先天性の病気は何一つありません

 はい、……だったのです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る