魔法使いの私が何ゆえ勇者選抜試験に挑むのか?
暗黒星雲
第1話 勇者選抜試験
私たちの学園には勇者選抜試験なるものがある。未来の勇者を見出し早期に英才教育を施す為の試験なのだという。当然、合格は数年に一人しかいない難関試験で、ほとんどの受験者は大けがをして不合格になる。時には死者もでてしまう位に過酷なんだって。
そんな過酷な試験に私が参加した理由とは……ウルファ姫に誘われちゃったから。一緒にパーティーを組んで下さいって。
勇者とは、仲間と力を合わせて強大な敵を打ち倒す者。だから、最終試験において受験者はパーティーを組んで難関に挑戦する必要がある……らしい。
今回、勇者選抜試験に挑むのは竜神族のウルファ姫。
小柄で色白でくせ毛の金髪が可愛くて、でも彼女の本質は皇国随一の力を持つ黄金竜で、でも人間の姿でもめっちゃ強くて、だから私はウルファ姫にぞっこんなんだ。へへへ。
遠くで何かが光った。
そして何かが風を切る音がして、私の目の前でウルファ姫が何かを掴んでいる。
「ティナ。ぼーっとするんじゃない。死ぬぞ」
姫が掴んでいたのは輝く光の矢、魔法の矢だった。私の額の10センチ手前で止まっている。その矢は姫に握られたまま光の粒子となって消えた。
「魔導ゴーレムの攻撃だ。来るぞ」
「はい」
私は両手を地面に置いてから呪文を唱えた。
「大地の盾」
私の眼前で地面が盛り上がって土の壁が出来上がると、ドスドスと音を立てて数本の矢が突き刺さったようだ。
「姫、どうするの?」
「距離は500メートル。ずんぐりした魔導ゴーレムが一体」
「そいつを倒したら試験終了なのね」
「試験の課題は『魔導ゴーレムを排して目標地点に到達せよ』だ。あの魔導ゴーレムの先が目標の教会だと思う」
「うん、わかったよ」
話には聞いていたけど、魔導ゴーレムなんてどうすれば倒せるんだろう?? 魔法で動く機械人形で、とんでもない硬さで刃は通らず魔法も弾くんでしょ。
「ねえ、ウルファ姫。あれ、どうやって倒すの?」
「どうするかな? ぶん殴るには遠い。ティナの魔法も届かない」
「そうだね。私の魔法だと25メートルくらいだよ。でも、魔法も弾くんでしょ」
「そうだ。恐らく、高圧縮の
「そうなの? そんなに硬いの?」
「ああ。ただし、あのゴーレムは強固な魔法防御を誇っているが、複数の魔法防御を同時に展開できない」
「うん」
「つまり、炎の魔法を防ぎながら氷雪の魔法を防ぐことはできない」
「と言う事は?」
「ティナが断続的に複数の魔法攻撃を仕掛ければ必ず隙ができる」
「その隙にウルファ姫が仕留めるの?」
「そういう事だ。ティナは全ての精霊魔術を使えるからな。期待しているぞ」
うん。多分そうだろうと思っていた。
普通の人は複数の魔法使いや防御に徹した僧侶系の魔法使いでパーティーを組むんだけど、その理由は魔導ゴーレム対策だったんだ。
私は一人で複数の魔法……火、水、風、土、四つの精霊魔術が使えるんだ。つまり、初級魔法使いだったら四人分って事。へへへ。凄いでしょ。
「でも、どうやって距離を縮めるの? あの、魔法の矢を防ぎながら500メートルは進めないと思う」
「上手く遮蔽物を利用しながら近づくしかないだろう。幸い、ここは廃村を利用した模擬戦場だから」
確かにそうだ。隠れながら、迂回しながら目標に迫るしかない。道の真ん中を堂々と歩いていた私たちが不味かったんだよね。
そうと決まれば移動するしかない。私は土の壁から少し頭を出して向こうを伺うんだけど、例のずんぐりした魔導ゴーレム……まるでキラーマシンみたいな……は、右手のボウガンを構えたままその場で待機していた。
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