中編


 そんな私が(動画などの歌い手も含む)3次元アイドルに対する価値観というのを変えたのは、大人になり社会人として過ごしてから数年経った頃のこと。






 彼らを―――歌い手というのを深く知るきっかけになったのは、よく見ていたゲーム実況者が動画にて歌い手とのコラボをしていたから。

 歌が得意なゲーム実況者と一緒にいろんなゲームをしたり、時には一緒に歌を歌ったりというコラボならではの動画が多く、動画チャンネルでもおすすめとして何度かピックアップされていたのだ。

 その時はまだ歌い手のことも分からなくて、けれど誰かがゲームをしているのを見るのが好きだったから、この時もどんな動画なのかとワクワクして再生ボタンを押したのを覚えている。




 そんなこんなで動画を見始めたわけなのだが。


 ―――見事に推しの沼にはまってしまった。それこそどんな歌や企画をしているか調べて何度も動画を観るくらいにはバッチリと。

 落ちるのに、時間はあまりかからなかったと思う。


 歌っているときの彼らはカッコよかったり可愛かったりと魅力的な姿ばかりが多く写っていて。けれどそれとは反対にゲームや企画をしている時の動画の彼らは大人の男性というよりもちょっと学生に戻ってやんちゃしているようなギャップがあって、見ているだけでこちらも楽しい気分になった。

 それが何よりもたまらなくて、気づいたらグッズを買うくらいに彼らに沼っていた。SNSも彼らのことを調べてフォローしたりして、彼らのことをもっと知ろうとした。動画チャンネルのライブ配信を見に行ったりしてコメントも送った。


 他にもただグッズを買うだけでなく、推しグッズを自分なりに作ったりもした。絵を描くのが苦手だからこその手作りでできるものを作ったけれど、彼らのことを考えて作っているその時間がなによりも楽しかった。








 ―――だからか。

 一度でもいいから現実に歌っている彼らを一目観たくなって、人生で初めてのライブに参加した。

 人気の歌い手ということもあってライブも抽選によるチケット購入だったけれど……それが見事当選したときの嬉しさは一言で言い表せない。いよいよ会うことができるんだと、ワクワクするのと同時に安堵する気持ちが綯い交ぜになってどうしたらいいか分からなくなったから。


 それでもライブに参加できるという喜びがなによりも大きくて、そのおかげでお仕事も頑張れた。ライブというご褒美のためならば、お仕事のミスで怒られてもへこたれないくらいに頑張れたのだ。

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