第3話
いきなりなんの準備もなく、"外"に出された私は
勉強しかしてこなかった私は
携帯を持たせてもらえてなかった私は
頼る親戚も友達もおらず、何をしたらいいのか、どうしたらいいのかもわからないまま、只ひたすら歩く。
お金は……ある。
確かめた荷物の中に、私名義の通帳があった。
結構な金額だった。
……確かにあの人達の子供だった証。
しばらくは生きていけると思う。
でも……。
すれ違う人達が、怪訝な顔をして私を見る。
そんなに酷い顔をしてるんだろうか……。
元からそんなに表情が表に出ることはなく、鉄仮面なんて呼ばれていたこともあったけど。
そうしてる内に、ポツリポツリと降りだした雨がアスファルトを濡らし始める。
天気予報で言っていたのか、殆どの人は傘を持っていて、次々に色とりどりの傘が街に溢れた。
そんな場合じゃないのに、綺麗だと思う。
でも私の荷物。
両親だった人達が投げつけてきた旅行バッグ1つ、その中に傘は入ってなくて、少しずつ強くなっていく雨に私はすぐにびしょ濡れになった。
それでも走るでもなく歩き続ける私を、今度は嫌なものでも見るような視線が。
その視線があの人達と重なって、気持ち悪くなる。
見ないで、見ないで、見ないで……。
視線を避けるため、細くて暗い路地に逃げ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます