第3話

いきなりなんの準備もなく、"外"に出された私は



勉強しかしてこなかった私は



携帯を持たせてもらえてなかった私は



頼る親戚も友達もおらず、何をしたらいいのか、どうしたらいいのかもわからないまま、只ひたすら歩く。



お金は……ある。



確かめた荷物の中に、私名義の通帳があった。



結構な金額だった。


……確かにあの人達の子供だった証。



しばらくは生きていけると思う。



でも……。



すれ違う人達が、怪訝な顔をして私を見る。



そんなに酷い顔をしてるんだろうか……。



元からそんなに表情が表に出ることはなく、鉄仮面なんて呼ばれていたこともあったけど。



そうしてる内に、ポツリポツリと降りだした雨がアスファルトを濡らし始める。



天気予報で言っていたのか、殆どの人は傘を持っていて、次々に色とりどりの傘が街に溢れた。



そんな場合じゃないのに、綺麗だと思う。



でも私の荷物。


両親だった人達が投げつけてきた旅行バッグ1つ、その中に傘は入ってなくて、少しずつ強くなっていく雨に私はすぐにびしょ濡れになった。



それでも走るでもなく歩き続ける私を、今度は嫌なものでも見るような視線が。



その視線があの人達と重なって、気持ち悪くなる。



見ないで、見ないで、見ないで……。



視線を避けるため、細くて暗い路地に逃げ込んだ。

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