プランナーの悩み

ソコニ

第1話

「これでは、まるでごちゃ混ぜの夢です」


遊園地プランナーのK氏は、机の上の企画書を睨みつけた。


世界中の物語やキャラクターが、まるで投げ込まれたようにひしめき合っている。恐竜のいる通りの隣では魔法使いが空を飛び、忍者の里を抜けると宇宙船が発着する港がある。


「完璧な設計とは言えません」とAI顧問が冷静に告げる。「テーマの一貫性が欠如しています」


悩んだK氏は、ある実験を思いついた。来場者の脳波を測定し、「理想の遊園地」を具現化するシステムを導入したのだ。


すると、驚くべきことが起きた。


人々の「理想」が重なり合うたびに、遊園地の風景が変化していく。サムライと海賊が剣を交える横で、アイドルのライブが始まる。古城のレストランでは、ハンバーガーとすき焼きが同じメニューに並ぶ。


「これは失敗作です」とK氏は嘆いた。「何の統一感もない」


だが、来場者の満足度は急上昇していた。


「だってさ」と、ある少女が言う。「人生だって、いつも筋が通ってるわけじゃないでしょ?」


「ほんと、その通りだ」と、隣にいた老人が相槌を打つ。「私の人生なんて、もっとごちゃごちゃしているよ」


K氏は気づいた。


人々は「完璧」を求めていたのではない。自分の人生のように、予測不能で、時には支離滅裂な物語を求めていたのだ。


一年後、この遊園地は「世界で最も不完全な完璧な場所」として、前代未聞の人気を博していた。


AI顧問は今でも首を傾げている。


「理論的には間違っているはずなのに」


その横で、ドラゴンに乗った侍が、未来都市の上空でアイドルと一緒に歌う姿が見えた。


(おわり)

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