遥悠久のフランシア
Old Boy 老青年
第一章 自由のフランシア 第一話 故郷にて
今でこそ私は大司教であるが、私はリーヨンの小さな村に三男として生まれた、我が家は貧しかったが、しかし食べるものに困ったことはなかった、つまり清貧をよく体現した家だった。冬備へのために私が斧を持って森の木を切っているといつもフランシアは私の事を見にきていた、そして決まってこう言った。
「ねえあなたその木を切ったら一つの命を奪うにと一緒のことなの。いつも言ってるでしょ?なんでわからないの?」
幼い私には何を言っているのかが理解できなかった、なぜなら私はとても敬虔な信徒だったから。
「木には命なんかありませんよ彼らは動かないし、喋らない、神父さまも草木には命はないとおっしゃっていましたよ?」
私がそういうと彼女は決まって、私に向かってこういうのだ、
「木はね、私たちが見ていない時に動いているの、でなきゃなんで木は大きくなるの?それに蝶は鳴かないけれども生きているわ、それに木は木の葉を揺らしておしゃべりしているの。傷つけたら出てくる樹液は彼らの血よ。」
私は斧の持ち手に力を込める
「精霊のちからで風が吹いて、結果として音が鳴っているだけでしょう?それに僕たちが見ていない時に動いているのだとしたら証明のしようがないじゃないですか。」
彼女は自分の美しい紺碧の髪を風に乗せる。
「木の命に一つ一つ精霊の加護があるのよ、私には木の声が聞こえるの」
私は眉を顰めてこういった
「あなたと話していると狐につままれている様な気分です、なんで彼らは夜に僕たちを襲わないんですか?あなたねぇそんなことばかり言って魔女裁判にかけられても知りませんからね?」
彼女は私のすぐ後ろで囁いた
「私はあなた以外にこんなことは言わないわ、それにあなたが思っているよりも木々は優しいのよ。私もね、」
「それってどういう…」
ひょいと彼女は2歩下がりこう言った
「木、倒れるわよ」
木の大きく軋む音と、衝撃音と共に、木が倒れた、ふと周りを見渡す、そこには冬の訪れを知らせる冷たく、肌を指すような風と、木々の葉の音のみが残るばかりであった。
もうフランシアはいなかった。
次の更新予定
2024年12月18日 20:00
遥悠久のフランシア Old Boy 老青年 @old_boy
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