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「おはよっ!陽向くん。昨日のドラマどうだった?」

俺を見つけるとすぐにかけよってくるまい。

相変わらず変装はバッチリだ。

それに人だかりができることもないから。秘密なのは本当のことだろう。

「……特に」

「えー!ひどーっ!泣くよ私。女の子泣かせるなんて大罪だからね!」

そう言いながらうるうると涙目になっていく。

「あー!ちょっと待って、上手かったって……あれ?」

まいの目に溜まっていたはずの涙は無くなっていた。

「へへー、引っかかったー」

え、嘘泣き?

「ね?自分で言うことじゃないけどすごいでしょー」

「……うん」

そんな感じで会った日は絶対に話すようになった。


でも、ある日彼女はあまり学校に来なくなった。

理由は明白で多忙。テレビの露出がどんどん増えていっている。

とりあえずLINEを交換したので、同じ講義はノートと黒板を撮って送ってはいるけれど、既読は遅いし既読がついても返信が来ないこともあって、やっぱり心配してしまう。

ピーンポーン。

鳴り響いたチャイム、午前0時半。こんな時間に誰が来たのだろう。

玄関の方へ向かい、ドアを開ける。

「おじゃましまーす」

「え!?まい!?」

やってきたのはまい。というか住所教えてないんだが!?

「え!?なんで住所知ってんの!?」

「前、ベランダで育ててるトマトの写真送ってくれたでしょ。私の嫌いなトマト。あれで分かった」

「……ストーカーかよ」

「あはは。今日ね私の誕生日なの。祝って!」

「いや、そんな自分から言うことか?」

一人で拍手をしながら自分にお祝いするまい。

「いやー、一番最初に祝ってほしいのは陽向くんだからさー」

「え?」

一番に俺…?

「お誕生日おめでとう」

「ありがと!プレゼントは?」

「え!?プレゼント!?」

そんな急に言われても用意なんかしてないし……。

「ないの?嘘でしょ〜、一応友達兼ファンでしょ?」

「全然その発想に至らなかった」

「私のおかげでテレビがある意味ができたんだし、それぐらいしてもらわないとね〜」

どうしよう。今から準備した方がいいのか?

でも、何を選べばいいかわからないし……。

「まぁ、それでいいんだけどね。私が欲しいプレゼントは物じゃない」

「え?」

物じゃない?それってどう言う意味……?

「君の秘密が知りたい。過去が知りたい。教えて?」

ドクン、と胸が大きく鳴った気がした。

君、秘密、教えて。

その言葉たちは初めて会った時に使っていて、あの時の感情を思い出してしまう。

この人になら、話してもいいんじゃないかって。

「………小学生から中学生まで俺はいじめられていた」

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