詐欺師試験
ソコニ
第1話 詐欺師試験
詐欺師免許更新試験の季節がやってきた。
会場となる地下施設に、全国から腕利きのペテン師たちが集まってくる。私も5年ぶりの更新だ。試験に落ちれば、詐欺師としての資格を失う。
「それでは、第一回詐欺師技能検定試験を始めます」
試験官は怪しげな紫のスーツを着た中年男性。明らかに偽物のロレックスを着け、安物のカツラをかぶっている。一流の詐欺師なら、もう少しマシな偽装をするはずだが。
「第一問」試験官が告げる。「あなたの口座に100万円が振り込まれました。これは誤送金です。さて、あなたはどうしますか?」
簡単すぎる。私は即座に解答用紙に書き込んだ。
『すぐに返金します。ただし、振込手数料2000円をご負担いただきます。これを500人分。計100万円の利益です』
試験官が不敵な笑みを浮かべる。
「第二問」試験官の声が妙に明るい。「この試験の受験料10万円は、何の為に徴収したと思いますか?」
私は一瞬、固まった。そして、全てを悟った。
この試験自体が、完璧な詐欺だったのだ。
試験官が大声で笑い出す。カツラが滑り落ち、紫のスーツがはじける。
「見事!あなたは合格です!」
私も思わず笑ってしまった。見事に騙された。これぞプロの仕事だ。
「ただし」試験官が付け加える。「これは違法な詐欺です。警察です」
「なっ!」
私が逃げ出そうとした時、試験官が再び笑う。
「冗談です。本当に警察だったら、こんな話はしません」
「では、この試験は?」
「それも、受験料も、全て本物です。詐欺師に詐欺を疑わせ、でも本当は正当な試験でした。これぞ最高の詐欺というものです」
「しかし、それが本当だという証拠は?」
試験官は黙ってニヤリと笑った。
結局、この試験が本物だったのか詐欺だったのか、未だに分からない。ただ、免許証だけは確かに届いた。それすらも偽物かもしれないが、私はそれを使って今日も稼がせてもらっている。
この話も、もしかしたら全部嘘かもしれない。でも、それこそが詐欺師の真髄というものだろう。
(終)
詐欺師試験 ソコニ @mi33x
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