第3話
「除霊完了です」
「ああ、そう……」
翌日、店のカウンターでマスターが作ってくれたトーストにオムレツとサラダを食べていた俺は昨夜の出来事を話していた。マスターは興味なさげに朝刊を眺めながらそのダンディな顎髭を撫でさすっていた。
「メシ食ったらとっとと仕事探しに行けよ。いつまでもタダ飯喰わせてやる義理なんかねぇんだからな」
「了解です。ハ◯ワみたいな場所とかってありますか?」
「ハロ◯? ああ、もしかして職安のことか? 身分もわからねぇヤツに仕事なんか紹介しねぇと思うぞ。ああいうのは信頼が大事だからな。よくからん奴に仕事なんか任せられるかよ」
「ああ、いまの俺って住所不定無職ですもんね。世知辛いっすね」
「とりあえず、街に行けばそれなりに日雇い仕事くらい募集してるからよ。外に張り出されてる掲示板とか覗いてみろ。単純労働で日銭くらいは稼げるぞ。お前みたいな奴でも使ってくれるだろ、たぶん」
「へぇ〜、そうなんですね」
俺はトーストをかじりながら適当に相槌を打っていた。
というわけで、食事を終えると俺は街に繰り出した。クロックスに黒いプー◯のジャージ姿という休日のヤンキーみたいな出立ちのまま。異世界では珍しい格好だろう。街行く人々から好奇の視線に晒されていた。
「あ、これか」
俺は職安の手前に張り出されてあった掲示板を見つける。
「ええと、なになに……? 新薬(劇薬ポーション)の治験に、魔獣討伐、崖に咲いてる薬草採取に、新技実験のサンドバッグ……なるほど、どれも死んでしまうヤツだな」
俺は張り出された内容を見て、納得したように頷く。
異世界に来てすぐまた死ぬなんて嫌だ。でも、この世界で死んだらどうなるのだろうか。この場合、元の世界に戻るのか、それとも。
ああ、そんなことを考えていたら元の世界が恋しくなってきた。吉◯家の牛丼やマク◯ナルドのハンバーガーが食べたい欲求に駆られるし、発売間近だった新作ゲームもプレイしたかったものだ。
「俺にできそうな仕事ないぢゃん! もぉー!」
そんな風に駄々をこねていたら、俺は掲示板の端っこ、それも下部の方に張り付いていた求人に視線が向かった。
【未経験歓迎!雑貨店従業員募集!】
◁職種:接客・販売
◁資格:不要
◁給与:時給890ゴールド
◁待遇:応相談
◁仕事内容:誰でもできる内容の仕事です。とにかく人手が欲しいので来てください。
雑貨店……要するに、コンビニでのバイトみたいなものだろう。それくらいなら危険はなさそうだし、経験はないけど俺でも出来るかもしれない。ていうか、仕事を選んでられないだろう。命の危険がないだけ有難いと思うしかない。
「よし、とりあえずはこれで……どうにか生活費を稼ぐか」
俺は掲示板からその求人票を剥がすと、記載された場所に向かうことにした。
とりあえずだが、俺はそこで早速面接を受けることになる。
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