中学生の私を救ったもの
伶佳 零
第1話
中学生の私を救ったものがある。
それは、定期テストである。
私は定期テストに救われ、そして、傷つけられた。
初めての定期テストで、私は学年内で2位の成績をとった。感想は、「こんな私でも、2位になれるんだな」だった。
正直、私は順位なんてどうでもよくて、ただ自分の時間が取れて、ほどよく勉強ができればそれでよかった。
しかし、私は周りの意見を気にした。
「あなたなら1位になれるよ」
周りの期待に流され、私は無理をして勉強をするようになった。
無理をしないと、私の元々の学力では1位になれなかった。
何度も定期テストを受けても、順位は2位のまま。
無理に無理を重ねて、2年生の最初のテストでようやく1位をとれた。
待っていたのは達成感ではなく、開放感だった。
「もうこれ以上無理をしなくていい」
その感情だけが、湧き上がっていた。
しかし、それは間違いだった。
ここから、1位を維持しなければいけない生活が始まった。
いつも気を抜けず、勉強を重ねた。
2年生の1年間、私は1位をとり続けた。
ここまで頑張れたのは、周りからのプレッシャーがあったから。
そして、定期テストに自分の存在価値を見出したからである。
私は運動ができず、根暗で友達もあまりいなかった。
勉強だけが、私の武器だった。
体育で大活躍のあの子にも、クラスのムードメーカーのあの子にも、勉強なら勝てる。
そこに自分の存在価値を見出したのだ。
定期テストは、私を救った。何もなかった私に、価値を与えてくれた。
ただ、これで終わりではなかった。
私は、2年生の秋、摂食障害になったのである。
もともとダイエットをしていたのもあったが、勉強のストレスが限界を迎えたのだろう。過食嘔吐がやめられなくなったのである。
過食嘔吐がやめられなくなってから、勉強がなおさらつらくなった。
しかし、私は自分の存在価値を失いたくなくて、そのまま勉強を続けた。
3年生になってから、すべてがどうでもよくなった。
高校受験さえうまくいけばいいや、定期テストの「順位」なんてどうでもいいと。
2位になったり1位になったりを繰り返した3年生だったが、別になんとも思わなかった。
結局、高校受験は成功した。
大学生になった今も、摂食障害は治っていない。
定期テストに対する私の想いは、当時を思い返せば、異常だと思う。
でも、それが私の中学生活を彩ったことは間違いない。
存在価値を見出すきっかけとなったのだ。
私は自分の中学校生活を、いい意味でも悪い意味でも、忘れることはないだろう。
中学生の私を救ったもの 伶佳 零 @reika_zeroro
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