12-二階堂-花子さんの話
教育学部四年の二階堂でーす。
トイレの怖い話っていえばやっぱり花子さんだと思うんだけど、流石にもう現役じゃないかな?
私が小学校の時はまだ児童書とかに載ってたりしたから、呼び出す儀式とかやったよ。はーなこさーん、あっそびましょー、って。出てきたことは無いけど、別のグループがやった時は誰も入ってない個室の水が流れたって騒いでたよ。幽霊見たわけじゃないけど怖かったって言ってた。
サークルの中で怖い話した時にその話したらさ、別の中学校だった子が私も花子さん呼んだことあるよって言うのよ。
その学校だと時間も出現場所も文言も、すごい明確に決められててね。水曜日の十九時二十七分に一番奥の個室を四回ノックして、「花子さん、花子さん、おこしください。花子さん、花子さん、おいでください」っていうのを二回言うんだって。
なんかこっくりさんと混ざってる感じもあるけど、こうやって呼ぶとたまに来るんだってよ。花子さん。
どうやって来るかってのは人によるらしいんだけど、共通してるのは、その場にいる人全員が濡れてる手で背中を叩かれて、その時に振り向いた子は作り物の赤い花みたいなのが一瞬見えるんだって。造花とかそういうのじゃなくて、運動会とかの時に作らされたりするじゃん、あの薄い紙重ねて束ねて真ん中で折ったやつを広げた感じの花。あれが密集したのが見えるんだって。
それ以外にも、電球がばちばちって明滅したり、誰もいない個室のドアがバン!って開け放たれたり、逆に誰かが入ってた個室が思いっきり開けられたのに中に人いなかったり、鏡の方からきゃきゃきゃきゃって笑い声が聞こえたり、窓の外に手形が付いたり、そういう感じなんだって。
でね、私が話聞いた子の時はどんな感じだったの?って聞いたらさ、あ、その子のこと、仮にAちゃんってことにするね。Aちゃん、友達のBちゃんCちゃんと一緒に行ったんだけど、共通の背中に手で触るやつがあった後は、何もなかったんだって。怖かったんだけどそれでみんなビビっちゃったから後ろは向かなかったし、そのあと何か起きたら怖いから身構えちゃったんだって。背中に感触があってから数十分か、数分か、もしかしたら数秒だったかもだけど、何にも起きないから周囲確認した後に、緊張も解けて何も起きないねって笑いあってたんだって。
お互いに背中見せ合って自分の手と手形見比べて噂マジなんだねとか言いながら先に手洗おうとして鏡見たBちゃんが叫んだんだって。
「笑ってる」って、すごい怯えながら。
何それって鏡見たら、手洗おうとして鏡の前に立ってるBちゃんも、それ心配して駆け寄ったAちゃんも、Cちゃんも、不自然なぐらい満面の笑みだったんだって。
その場で笑うシチュエーションなんてないのに、お互いに目視してると恐怖の表情なのに、鏡の中の自分は笑ってる。怖くなって花子さんに謝ろうってなって、パニクってこっくりさんと混ざってね、「花子さん花子さんおかえりください!」って何回も言っても、何も起きないの。怪奇現象なんて。背中を触られた以外に何も起きない。
もう日も暮れて来たし、そろそろ学校も閉まるってなったから、もうあきらめようって雰囲気になったんだって。笑ってるだけだし、この鏡見なきゃいいし、鏡見ないようにもう走って帰ろうって誰かが提案してみんな賛同したらしいよ。
誘ったの私だからってAちゃんが先陣切ってドアに手を掛けようとしたときに、見ないように見ないようにって思ってたけど、見ちゃったんだって。
そしたら、BちゃんもCちゃんも同じように怖くても鏡見ちゃってたらしくて。
そこに映ってたのは三人の満面の笑み。
……そして、もう一人、知らないスーツの大人の女の人が無表情で後ろに立ってるのが見えたんだって。
そこからはもう全力で走って、内履きのまま校門出て、全員で家まで帰ったって。
あれが花子さんだったかはわからないけど、そのあとは特に何もなかったけど、そのトイレはずっと近寄らなかったって。
怖いよねえ。
花子さんがってより、『それ』が花子さんなのかなって感じなんだけど。
私が知ってるのっておかっぱの女の子ぐらいだけど、少なくとも手だけだったり作り物の花の集合体なんてメジャーじゃないとは思うんだよね。
辻褄が合わないっていうか、トイレに出て、花子さんを呼んだら出てくるからってのでひとくくりにしてるけど、なんだろうね、なんか、いいのかなぁって思うけど。
正体なんてわからないし今後わかることも無いんだろうけど、どんどんいろんなのが混ざっていくのって怖いなって話でした。
次の人どうぞ。
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