ある百の怪の会の末路

8-成田-スーパーの偽怪の話

　さっき呼ばれてたタクです。

　成田タクミ。工学の三年っす。

　ミヨ待たせてるんで短めなんすけど、実際に体験した怖い話っす。

　スーパーってバイトしたら週に何回も入んなきゃいけなさそうでダルいじゃないすか。でも盆とか正月の臨時バイトならその時だけの契約でいい上に複数人でのバイトだから一人当たりの仕事量そこまで多くないんすよ。

　近所のスーパーで高校の頃からそういう時だけバイトしてたからすっかり顔なじみってか短期のベテランみたいなのになってたのもあって社員の人からバイトリーダー頼むよとか言われちゃって。俺も調子乗ってましたね。悪い気しないんで。

　自分で言うのもアレなんすけど、俺まあまあ要領いいから、プライド高そうなやつにはミスってへそ曲がらないように簡単めな仕事任せて、接客向いてなさそうなやつは商品づくりとかさせて、力仕事要員細かい作業要員とか分担して……みたいにわりときっちりやったんすよ。早く終わったら早く帰れるし、それで給料変わらないなら効率的にやらないほうがバカっしょ。

　それで臨時バイトが終わった後、次の日のシフトとか確認するように俺含めて各部門の年長者が集められて、社員玄関で社員さんの戸締り終わるの待ってたんすよ。

　暇だったんで雑談して、盆だったから怖い話になったんすけど、何個か話のストックはあるし……と思ってたら被る被る。言い出しっぺが俺だからトリやるよとか言ったのに同じネタ出したら寒いじゃないすか。俺の番になった時に言っちゃったんすよ。

「そういやこの店、死んだ人いるらしいんだよ。お前らも何回か通ったろ？あの急な階段。荷物持ってだとあぶねーって言いながら降りたじゃん。あそこで足滑らせて、ガタガタガタ……ガン！！！！って壁に頭ぶつけて死んじゃったんだって」

　そう、今みたいにガン！！！！のところで大声出してね、びっくりさせてやりましたよ。どうせ嘘だし、自分の手番そうやって乗り切ったら嘘なんですけどねーでやり過ごそうかと思って。整合性とか無視して。でも、そのガン！！！！のところがあまりにも受けたから、もう一発やってからネタばらししようと思って、もう一回嘘重ねました。

「残ってた社員はその人だったから朝まで見つけられなかったんだって。それからその人の命日になると、見つけてほしくてその音が鳴るんだ」

　無茶苦茶っすよね。なんだよ見つけてほしいって。後から考えたらそう突っ込めるけど、俺も含めて全員話に集中してました。

「それが今日、この時間、ちょうど、今！！！！」

　って階段の方角に指向けました。

　鳴るわけないんです。だって嘘だから。

　ガタガタガタ……ガン！！！！

　なのに、鳴りました。

　叫ぶ女の子、うわっ！って引く男、青ざめてる俺。

　いねえはずなんすよ。上階には誰も。俺たちが玄関に来た時に社員の人が施錠して、社員さんは下の階の見回りしてたはずなんです。鍵の開ける音とかしなかったからもう一回上に行ったりはしてないんです。

　全員で固まって動けなくて、階段の方から視線は離せない中で。

『確認しないの？』

　って、低い声が耳元で聞こえて、全員で玄関から外に全力で出た。

　……少し離れたところに行ってある程度落ち着いてから恐る恐る戻って、社員さんがどこ行ってたのとか怒ってるときに今の話したけど、今までそのスーパーで死んだ人とかいないって言ってたんです。俺も嘘だからって言ったけど、それじゃあ、あれなんなんだよって結局わからないままその日は帰りました。

　次の日その時いたやつのうち二人が辞めたってのを聞いて、俺も責任感じてそのシーズンのやりきってから次からのは申し込まないようになりました。業務妨害っちゃ業務妨害ですし。すげえ反省してるんすよ。やっぱり嘘とか駄目だなって。誠実なのが一番っす。

　でも、情けねえ話なんですけど、この話、なんか『スーパーの偽怪』ってタイトルでそこのところでまだ噂されてるみたいで……体験した奴もいるらしくて、怖いんすよね。嘘ってわかってるのに、いるって噂されてたら、そりゃもう嘘じゃないじゃないすか。

　作り話はダメだなって思います。特に怖い話はダメっす。

　次の人どうぞ。