幼馴染を寝取られた俺はイケメンモテ男に復讐する。

越山明佳

第1話 絶望

 どうすればよかったのか、わからない。


 俺、九条くじょう史識ふみのりは生まれながらの幼馴染、宮本みやもと明澄華あすかとは恋人同士だった。


 厳密には違うのかもしれない。

 なぜなら告白をしていないから。


 中学卒業の勢いとはいえ、やることをヤッただけにショックだ。

 女はヤッた男に惚れるというのはデマだと知った。


『おおきくなったら、ふみのりとけっこんする』


 そんなことを言ってくれた明澄華あすかはどこへ行ったのだろう。


 いつの間にか俺の布団に潜り込んできて朝には『おはよう』って言ってくれたあの日々が懐かしい。


 思えば高校入学時から違和感があった。

 生徒会長、いけ将一郎しょういちろうのスピーチにやられたのだろう。


 やたらと、いけのことを明澄華あすかは褒めていた。


「付き合うならいけ会長がいい」


 それを聞いたときはショックだった。

 あんなことまでしたのに俺らは付き合ってはいなかったらしい。


史識ふみのりは告白してくれないし、うじうじしてて優柔不断だし。いけ会長の方がいい」


 はっきりと告白しなかったのが原因なのか?

 言わなくてもわかってくれると思うべきじゃなかった。


 今からでもと思った時にはもう遅かった。


明澄華あすか、なにして……」

「なにって、彼氏とデートだけど! それがなにか?」

「いや、だって……」

明澄華あすかちゃん、この人は誰かな?」

「ただの友達です」

「そう。悪いけど見ての通り僕は彼女とデート中なんだ。だから失礼させてもらうよ」


 俺に背を見せて去っていくふたり。


 明澄華あすかは顔だけ振り向かせ、あっかんべーと俺への敵意をむき出しにしていた。

 ただ、その顔はどこか悲しげに見える。


 明澄華あすかの気持ちがわからない。


 明澄華あすかは楽しそうな笑顔を浮かべ、いけの野郎の腕をぎゅっと抱きしめながら去っていった。

 明らかに俺への当てつけだ。


 確かにいけの方がいいと言っていたが、それが現実のものになるとは思わなかった。


 明澄華あすかはもう俺の隣にはいないことを悟り、明澄華あすかとヤッたあの日のことは夢や幻のように感じられた。


 いい夢を見させてもらったと割り切れれば幸せかもしれない。だが、そうは思えなかった。


 俺は電池を切らしたロボットのように立ち尽くし、いつ降り出したのかもわからない土砂降りの雨に濡れていた。

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