俺たちは幸せになれるのか
杉山 士道
第1話 社会不適合生物
田舎も田舎もクソ田舎、そのうち際立ってボロボロな団地の犬小屋のような一室で、引きこもり歴2年の真田遊人は目を覚ました。国民的キャラクターの形をした古い時計は11時をさし、真田の残り滓すらあるか怪しい社会性を表していた。
真田遊人は近所でも指折りの社会不適合者である。その社会不適合適性は保育園時代にすでに発現しており、同級が漢字を覚え先生の言うことを聞き声を揃えて歌う中、真田は石を投げうち泣き喚いてセンスも押韻もない替え歌を自慢げに歌い散らしていた。少数の者を除いてこの超絶問題児を当然毛嫌いし、中には間接攻撃だが手を挙げるものもいた。幼児真田に根深いトラウマを植え付けたことは言うまでもない。自業自得ではあるが。
しかし今日の真田は違った。いつもは起き抜けの股ぐらを弄るために伸びる右手がスマートフォンを掴み、慣れない操作で電話番号を打ち込む。そのままスピーカーで通話が始まり、寝ぼけ眼とは思えないほどいやに流暢なトークで何かしらの日程を決める。通話は5分とかからず終わり、不服そうなうめき声を漏らしながら布団から脱出する。
着替えを終え、亀の歩みのような足取りで玄関を出た真田は階段を降り、自転車置き場に着く。彼の愛車は電動アシスト付き自転車。たまに通電が悪くなってアシスト機能がなくなったり、ペダルが馬鹿みたいに重くなったりとガタガタの醜態を晒すものの、自動車どころか原付すらない真田の足として今日まで貢献してきた。
それに跨り、真田は全速力で駆け出す。
駅に到着。古臭い塾や売店が隣接するこじんまりとした駅ではあるが、一応特急が停まるのがウリ。自転車置き場に愛車を停めると、入り口あたりに見知った顔を発見した。男二人、女一人。学生時代の同学年であることを確認。合わせる顔を持ち合わせない引きこもり男はスニークミッションへ移行する。抜き足....差し足....忍びあ
「あれ、真田くん」
ばつの悪そうな顔を表情筋で強引に戻し、にこやかな表情をなんとか生成する。最初に反応したのは女___白石。同性の平均身長を大きく上回る体格と、田舎に珍しい垢抜けた美貌を持つ。遅れて顔を向けてくる男二人。一人は生意気そうな顔を引っ提げ、一人は爬虫類を想起させる顔でこちらを見る。二人とも明らかな低身長、こんな美人を囲っているのに強烈な違和感を感じるルックスである....ひきこもり無職と比べると実に些細なバッドステータスであるのは、真田本人が一番理解しているのだが。
「おいおい真田、しばらく見なかったな」
「@:*。<>?!」
生意気面_____稲田が意地悪そうに微笑む。どこを探られても痛い腹を探りまわされているようで気分が悪い。爬虫類顔___下屋は滑舌に多いに問題があるので昔から一言も聞き取ることができない。どちらも愛想笑いで乗り越え、真田は先を急ごうとする。
「じゃ、じゃあ急ぐから元気で....ね元気で....」
「待てよ、お母さんから聞いたぞ引きこもり」
世界が凍る。足の長さ、速さともにこちらが圧倒していて、駅構内に逃げ込むのなんて容易なのに。
俺たちは幸せになれるのか 杉山 士道 @sugi_ogi1198
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