第三章
第40話 淡白な親子
__数か月後。
「魔物討伐ですか?」
「ああ、フォルシア伯爵領での魔物討伐に行くことになった。一緒に来てくれるか?」
「ご一緒してもいいのですか?」
「一緒に来てほしい」
「わかりました。魔物討伐は初めてですけど、何とかなると思います」
頑張ろうと思えば、ゲオルグ様が笑う。
「ミュリエルに魔物討伐は期待してない」
「じゃあ、私は何をするんですか?」
「一緒にいて欲しいのと、フォルシア伯爵領は母上の生家だ」
「お母様の?」
「母上に会わせようかと……」
「お、お母様に?」
思わず、声が上ずる。そう言えば、陛下は他界したけど、お母様のことは聞いてなかった。
突然の誘いに驚きながらも、ゲオルグ様が魔物討伐に行くことになり、私も一緒に行くことになった。
ゲオルグ様に飛竜に乗せられてフォルシア伯爵領へと飛んでいる。ルキアは、私の服の中に隠れていた。
「どうした? 今日はあまり話さないな」
「緊張します。お母様にはなんと挨拶をすればいいのか……」
「いつも通りで大丈夫だろう……」
「でも、王妃様ではないのですか?」
「そうなるが……早々に城から離れているからな」
「知りませんでした」
「そうだろうな。父上が存命の時から城を出ているから、会うことはなかっただろう」
「……ずっとですか?」
「ずっとだ。もう何年も前からのことだ。ちなみに、理由は父上が妾を持っていることに腹を立てて城を出た。家出だな」
「妾ですか? でも、後宮には、私一人で……」
「あれは、俺の後宮だ。父上には、父上の後宮がある。今はすべて解体している」
グリューネワルト王国はお城も広すぎで、別の後宮があるなど気付かなかった。そもそも、妃になろうと望まれて少しずつ城へと出向くようにもなったが、陛下の後宮話は初めてだった。
「ああ、あれがフォルシア伯爵邸だ」
「大きい……」
飛竜の眼下には、広い庭に城のような出で立ちの邸、広大な敷地を誇るフォルシア伯爵邸が見えた。
緊張が解けぬままでフォルシア伯爵邸へと到着すれば、玄関外には使用人一同が並び、一際威厳を放っている王太后がいた。
竜騎士団を伴いフォルシア伯爵邸へと降り立つと、颯爽とゲオルグ様が飛竜から私を抱き上げて下ろしてくれる。
「ゲオルグ。久しいですね」
「ええ、母上もご健勝で……何年ぶりでしょうか」
「さぁ……2年かしら? それとも3年?」
「もう5,6年会ってない気がします」
ゲオルグ様もお母上様も会ってない年月が不明だ。
ゲオルグ様とは違う薄いクリーム色の髪を結わえている。背が高くて、ゲオルグ様の母上らしいと思える。鋭い眼でちらりと私を見られれば、ドキッとした。
「そちらがお気に入りの妾ですか?」
「彼女は側妃にあげました。いずれ、正妃へとします。今は、妃になる教育期間中で……」
威圧感たっぷりの王太后が私をジッと見ている。睨まれている感は否めないが、挨拶を求められている気がした。
「お会いできて光栄です。お初にお目にかかります。ミュリエル・バロウ伯爵と申します」
「……身分は確かなようね。私は、ミルヴァと申します。すぐに晩餐にいたします。いらっしゃい」
膝を曲げて挨拶をしたが、冷たい雰囲気だった。素っ気ない態度に歓迎されてない気がする。
それは、晩餐会でも続き険悪な雰囲気のままでフォルシア伯爵邸での滞在が始まった。
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