第11話 アレを買いに行こう!


「ルキア……大変よ」


大きな王都の街は、石畳に舗装された洗練されたような街並みだった。人も多くて、貴族たちが多く行きかっている。

あまりの大きさと美しさに圧倒された。そして、店が全く分からなくて呆然と立ち尽くしていた。


目深に被ったフードの中から、ルキアが少しだけ顔を覗かせた。


「くるぅ」

「えっ? あっち?」


ルキアが指さした方角を見れば、見取り図のような街の簡単な地図が立っていた。


「えらいわ。ルキア」


そっとルキアを撫でるが、地図を見ても何もわからない。どうしようと、困ってしまう。


「ルキア。お店を知っている? 薬の匂いでもしないかしら?」

「きゅ!!」


ビシッとスライムのぷよぷよの手でルキアがまた指さした。


「あっち? その自信はどこから来るのかしらね」


だけど、私は街を何も知らない。とりあえず行ってみるしかない。右も左もわからないのだから。


「信じているわよ。ルキア」


そうして、ルキアが指さした方角へと俯きながら走った。



「……あれは、何をやっているんだ?」

「さぁ? 突然下を向いて走り出しましたね」


リヒャルトと忍びで街の視察へと来れば、ミュリエルを発見した。何と思えばいいものかと、呆然となる。


「しかも、向こうは人気のない裏路地ですね。誰かと逢引きでしょうか?」

「さぁな。お前は先に帰れ」


リヒャルトに素っ気なく応えた。



「ルキア……本当にこっちに薬屋があるの?」

「くぅぅ」

「よくわかってないのね。あの自信はどこからきたの?」


裏路地に来てさらに困ってしまう。ひと気が怪しい路地だ。周りは不穏な男性ばかり、ニヤリと視線を向けられると、びくりと身体が強張った。


どうしようか。なぜか自信満々のルキアの指さした方に走ってきた。『魔眼』を見られないようにと、下を向いて……ちらりと周りを見れば、女性が走っている。


女性なら道を聞きやすいかもとホッとして思い切って声をかけた。


「あ、あのっ……」

「なに?」


不愉快そうな顔で女性が足を止めた。胸元が開いた派手な洋服。ドレスにしてはくすんでいた。


「……借金取り? こんなところまで……しかも、女をこんなところに来させるなんて……」

「借金取り? ち、違います! 道をお聞きしたくてっ……」

「迷子?」

「す、すみません。右も左もわかりません」


呆れた様子で、女性が私を見下ろす。でも、私が借金取りではないとわかったらため息交じりで話しかけた。


「ここは、あまり女が来るところではないわよ。娼館があるからね。行きたいところはどこなの? 少しだけ待ってくれたら、中心街まで案内してあげるわ」

「本当ですか?」

「で、どこに行きたいの?」

「く、薬屋?」

「その自信なさげは何なの? 本当に薬屋に行きたいの?」

「どうしても欲しい薬があって……」

「何の薬?」

「ええーっとですね……その……夜のお供に使う薬をですね……」


言いにくくて声がくぐもる。でも女性は私が話すのをじっと待っている感じだった。


「セレス。金はできたか?」

「あんたたち……」


ニヤニヤする不穏な男三人が、いつの間にか私とセレスと呼ばれた女性を囲んでいた。スーツ姿なのに、どこかガラが悪くて、女性を心配気に見た。


「お金なら、今から換金するところよ。そんなに急がないで」

「だが、時間が来ている」


ニヤニヤしている男の一人が懐中時計を開いて言う。


「セレスさん?」

「私の名前よ」


セレスさんと男たちが、私を挟んで睨みあう。


「あの……もしかして、私のせいで時間が過ぎてしまいましたか?」

「そうだけど、そうじゃないわ。これはいちゃもんよ」

「だが時間は、10時までのはずだ」

「たった数分すぎたぐらいでガタガタ言わないで欲しいわね。どうせ、約束の10時には来る気はなかったんだからっ……」

「わかっているなら、一緒に来てもらおう。坊ちゃんがお待ちだ」

「お断りよ!! 離しなさいよ!!」


セレスさんが腕を掴まれて抵抗した。それを止めようと、慌てて男の腕を掴んだ。


「や、やめてください! 嫌がっているじゃないですか!!」

「なんだ? この子供は!?」

「一緒に連れて行け! セレスの関係者だ!」




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