誰にでもやさしいあの娘は、俺にだけやらしい
暁刀魚
俺の幼馴染はちょっとやらしい
俺のクラスには、誰にでも優しく誰にでも愛される美少女がいる。
八崎リリ。
黒髪のポニーテールが特徴的な、少し小柄な美少女だ。
そのプロポーションは、多くの男子に人気がある。
だが、何と言っても彼女が愛される理由はその優しさ。
学校で困っていることがあれば、いつの間にかやってきてそれを助けてくれる。
重いものを運ぶ時には、いつの間にか人より多くのものを運んでいるし。
部活の助っ人としてもあちこちで引っ張りだこだ。
勉強はそこそこだが、運動神経はとにかく抜群なのである。
こんな話がある。
ある日、学校へ登校中だったリリは道端に倒れている女の子を見つけた。
どうやら転んで擦りむいてしまったようだが、あいにくリリには絆創膏の持ち合わせはない。
ただその子はリリの母校に通っている子供であり、母校はちょっと通学路を逸れればあるから、寄り道するだけでいい。
なのでリリはその子を背負って、一旦母校の小学校へ向かうことにした。
その最中、商店街を通るのだがなんとそこでひったくりが発生したのである。
ひったくりを追いかけたいが、怪我した子をおいていくわけには行かない。
そこでリリは自身の高い身体能力を活かし、子供を抱えたままそのひったくりに追いついてしまった。
子供は突然のアトラクションに大興奮、たいそう喜んだそうである。
そんなふうにリリは、あらゆる人に平等に優しく。
困り事があればそれをまとめて全部解決してしまうすごいヤツなのだ。
それと、リリは周囲からは純真無垢な存在だと思われている。
なにせサンタはいると今でも信じているし、子供はコウノトリが運んでくると思っている。
ようするに、性的なことへの知識はないと判断されているのだ。
そんな子に、すけべなことを吹き込んではならぬと女子たちは息巻いている。
こんな天使みたいな子が、エッチな訳ありません! と。
だからそういう雰囲気の話は、リリの前では絶対にNG。
男子がリリをエッチな目で見るのもご法度だ。
しかし、しかしである。
俺は――リリの幼馴染である俺だけは知っている。
確かにリリは、純真無垢だ。
サンタだって信じてる。
だけど、しかし。
彼女はどういうわけか、俺にだけ――――
♡
――――水音がする。
カーテンの閉められた、薄暗い室内に影が二つ。
男女の影だ。
男の方――つまり俺は大して特徴はないが、女の方――その影は非常に豊満で、扇状的だ。
艶めかしくその体は揺れ、ブラに覆われた胸は弾力をもって揺れている。
「ん……ん、ん」
女――リリは艶やかな吐息をこぼし、それに吸い付いている。
俺の肌をリリの身体が刺激して、リリは自分を思い切り俺に押し付けてくる。
熱と吸い付かれる感覚が、俺には常に伝わってくるのだ。
「ん、……ぷぁ。……えへへ、ごめんね」
そういってリリは――俺の指から口を離す。
唾液の橋が、口元と指につながる。
「君と二人っきりで言うと、どうしてもあったかくなっちゃって……」
「いや、うん。俺としては嬉しいから、いいよ」
間違いなく、約得ではある。
ただそれと同時に、とんでもない生殺しでもある。
なにせ――俺とリリは一線を越えていないからだ。
そう、リリは純真無垢である。
サンタは実大すると信じている。
子供はコウノトリが運んでくると思っている。
子どもの正しい作り方なんて、当然しらない。
だけど、それはもう――
「えへへ……やらしくて、ごめんね」
やらしいのだ。
リリはどういうわけか、幼馴染の俺にだけやらしい。
いや、どういうわけ……というか。
そりゃあ生まれた時からずっといっしょで。
こうして二人きりで抱き合っているわけだから、まぁ、お互いに好意はあるはずなんだけど。
それはそれとして、やらしい。
だが、リリのやらしさはこれが限界である。
俺の指を舐めて、それで満足してしまうのだ。
とんでもない話である。
だが、仮に、もし仮に、リリと一線を越えてしまったら。
それはもう凄まじい目で女子から睨まれる。
ただでさえ、今だって「リリがきちんと知識を理解するまで絶対に手を出すなよ」と常に圧をかけられているのだ。
一応、リリに性知識を教える試みは少しずつされている。
だが、成果は今だ芳しくない。
なんとか高校卒業までには成果は出すと、リリの親友は息巻いていたが。
それはそれとして、リリのやらしさがいつオーバーヒートしてしまうかわからない。
知識がなくとも、本能だけで色々とこう、なんとかしてしまうかわからない。
俺にできることはただ一つ、女子たちにこの関係を知られることなく。
リリのやらしさを、いい感じに保つことだった――!
誰にでもやさしいあの娘は、俺にだけやらしい 暁刀魚 @sanmaosakana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます