第2話 境界線を引くということ
Takerとの関わりに疲れ果てた私が最初に取り組んだのは、「境界線を引く」ということでした。それまでの私は、「頼まれたら断らないのが優しさ」「職場で協力するのは当然」という思い込みに囚われていました。でも、それが結果的に自分を苦しめることになるとは考えていなかったのです。
ある日、信頼できる先輩に相談しました。「どうして私はこんなに疲れてしまうんでしょうか?」と。すると先輩はこう言いました。
「紗和ちゃん、自分ができる範囲を決めるのが大事だよ。誰かのために無理をしすぎると、結局、自分も相手も不幸になるからね。」
その言葉は目から鱗でした。私は自分が「断ることは冷たい」「協力しない人と思われたくない」という不安に囚われ、Takerの無理な要求を受け入れていたことに気づきました。でも、それは本当の優しさではない。むしろ、自分のキャパシティを守ることで、心の余裕を取り戻し、他の人にも本当の意味で協力できるのではないかと考えるようになりました。
初めて「NO」を言った日
次の日、私は意を決してTakerの要求に「NO」と伝えることにしました。その日の彼女は「ちょっとこれ手伝って!」と、また当然のようにお願いをしてきました。これまでの私なら、「仕方ないな」と思いながら助けていたでしょう。でもその日は違いました。私は冷静にこう伝えました。
「それ、今の自分の仕事が落ち着いてからでないと手伝えないな。」
Takerは一瞬驚いた顔をして、「え、でもすぐ終わるよ?」と食い下がってきました。それでも私は微笑みながら繰り返しました。
「今は自分のやるべきことがあるから、ごめんね。」
彼女は明らかに不満そうでした。しばらくすると「協力しない人」と噂を流している様子も感じましたが、不思議と私は気になりませんでした。むしろ、自分がやるべきことに集中できる喜びと、「自分の時間を守れた」という達成感が大きかったのです。
境界線を守るための心得
この経験から、私は「境界線を引く」ためにはいくつかの心得が必要だと学びました。
1. 自分の限界を明確に知る
何を引き受けて、何を断るべきかを自分の中でしっかり決めておく。曖昧な態度はTakerに付け込まれる原因になる。
2. 冷静でシンプルな言葉を使う
断るときには感情を込めず、淡々と伝える。「ごめんなさい、今は無理です」という一言で十分です。
3. 相手の反応に動揺しない
Takerは断られることに慣れていないため、怒ったり不満を持ったりします。でも、それは彼らの問題であって、自分の責任ではありません。
Takerの要求をすべて受け入れる必要はありません。むしろ境界線を引くことで、相手との関係性が健全になることもあります。もちろん最初は勇気がいりますし、相手の反応が怖くなることもあります。でも、自分の心を守るためには、境界線を引くことが不可欠なのです。
次回は、境界線を引いたことで生まれた余裕を、どのように心の平穏や集中力に変えていったのかについてお話しします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます