紗和の経験から、得たTakerの対処法。
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 奪われる日々と、心の疲弊
Taker──奪うばかりで与えない人。この言葉を知る以前に、私はその存在を身をもって感じていました。相手は職場の同僚で、初対面の印象はむしろ良かったのです。明るく、気さくで、周囲とすぐに打ち解けるタイプ。その裏に潜む「奪う姿勢」に気づくのに、そう長くはかかりませんでした。
彼女はいつも「ちょっと教えて」「それ貸して」「手伝って」と、人の力を借りるのが得意でした。最初のうちは私も「同僚だから」と手を貸していました。ところが、手伝った分の感謝もなければ、彼女自身が努力する様子もない。むしろ私が協力することで「できて当然」と思われているような態度が目立ち始めました。
さらに問題だったのは、彼女が他人の成果をまるで自分のものかのように振る舞うことです。上司の前で堂々と「私がやりました」と報告するその姿を見て、私は心の中で苦々しい思いを抱きました。「私がしたことなのに…」と悔しさが募る一方、直接指摘する勇気も持てない自分に苛立ちました。
こうした日々が続くと、心がどんどん疲弊していきました。彼女と顔を合わせるだけでイライラし、彼女の声を聞くたびに注意力が削がれる。仕事にも集中できなくなり、家に帰ってもそのモヤモヤを引きずる日々。自分の感情が彼女に支配されていることに気づきながら、どうすればいいのか分からず、ただ消耗するばかりでした。
「なぜ私ばかりが…」そんな思いがぐるぐると頭を巡る中で、ある日、ふと思ったのです。**「相手を変えるのではなく、自分の行動を変えなければいけないのではないか」**と。このままでは、私の心が壊れてしまう。それを避けるためには、彼女との関わり方を見直す必要がある。そう考えた瞬間から、私は少しずつ「自分を守る」ための準備を始めることにしました。
Takerはどこにでもいます。そして、Takerを変えることは難しい。それなら、まずは自分の心を守ることを第一に考えよう。次回は、そんな私が学び取った「境界線を引く」という技術についてお話ししたいと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます