和也の懊悩



ここで世界線と時系列は飛んで実咲や彬達のいた前世、2050年初秋、実咲の殉職直後の事・・・・・・。


「なら実咲はそこの世界に?!」


大日本国首相井浦沙羅の姿は占守島の地下深くにある平行世界などを監視、或いはその別世界の人々と交流を図るための組織、世界研究庁のモニター室にあった。

彼女もまた、元は別の世界からこの世界に生まれ変わった転生者であり、幼なじみで親友であった実咲の死後、その魂がどこに転生したかを探していたのだ。そして今日、それが見つかった。


「この世界は、我々と同じ暦システムを使っているかは分かりませんが現在1939年で主に米仏墺と日英独露に分かれ第二次世界大戦の真っ最中のようですね。林元帥のみならず戦友や元部下の方々も多く転生しているようです」


「それで戦時下の日本の総理が実咲・・・ちーちゃ・・・千寿がお上ってまじ?」


「マジもマジです。元帥が政治家になり、総理になったのはそのあちらの陛下、沙羅さんの弟さんのご意向みたいですしね。ただそのご意向はあくまで元帥を守るためのはずが、元帥は逆に・・・・・・」


「・・・そりゃ千寿はあいつにとっても可愛い弟だもん、気持ちは分かるよ。私だって本当ならすぐにでもこの世界に行って・・・・・・」


「あなたは首相で国民人気も絶大なんですからこの世界にいなくなられたら困りますよ」


「分かってるわよ・・・」


まあとにかく、実咲の居所が分かったから安心したわと震えた声で言って、地上へ出て水艇に乗り込み東京へ戻る沙羅。



東京市葛飾区 井浦沙羅首相私邸


「和也、実咲はやっぱ転生しとった」


この世界での実咲の最期の時を唯一見届けた人物でもある息子、和也に世界研究庁の研究室で見た事を話す沙羅。


「・・・そこは平和な世界だった?」


「・・・・・・」


そうだよと答えたい。あの時、あの事故の時公用車を運転していたのは和也で、自分が実咲を死なせたんじゃないかと責任を感じている様子の息子を安心させてやりたかったが、沙羅はどうしてもその嘘がつけない。


「あの時、無理にでも助けられとったら・・・」


「なん、あの時の実咲はどちらにせよ・・・あんたもママと同じ、元救助のプロなんだけん分かっとったろ」


「でも、でも・・・」


「ばか、変な事考えんなよ。和也は何も悪くない、ちゅうかそぎゃん責任感じさせんために実咲はあん時、自分の命令て形であんただけ脱出させたっだろ。あんたが死んだら私や俊弥が悲しむ、空襲で死んだ茜ちゃん(和也の妻)と羅音(和也と茜の息子)も許さんだろって・・・・・・」


「茜も僕と羅音ば守るために・・・でも僕は羅音を守りきれんだった、それだけじゃない千寿兄ちゃんも、美奈も・・・実咲姉ちゃんまで!!災害派遣、人命救助のプロとして僕は・・・・・・」


「和也・・・そっか、自分を許せなかったんだ」


「うん・・・結局、僕はママとパパにグアムで拾われた時からずっと、守ってもらってばっかで、しまいには守るべき対象に身を持って守ってもらって・・・・・・ねえママ、セカケンには別の世界とこの世界を繋ぐ"ゲート"の発生装置があるよね」


「え、うん・・・あ、いやいや、ママも経験したばってん転移は身体に負担かかるし、今のあんたじゃ・・・・・・」


「僕は林美咲海軍長官の護衛としてまだ果たしてない任務を遂行しに行くだけよ」


「ちょ、ちょい待てお前・・・俊弥ー!あんたからも言ってやって!」


「和也、気持ちは分かるけどパパもママもお前がおらんくなったら・・・・・・」


「なん、もともと僕はママ達の実の息子じゃないし・・・・・・ばってん2人とも実の親以上に愛情くれて・・・んね、2人だけじゃない、実咲姉ちゃんも弦さんにも千寿兄ちゃんにも僕は・・・だけん、ほっとかれんよ」


実の子と同じように、いやそれ以上の愛情を持って育ててきたからこそ、その息子の覚悟は覆せないと俊弥も沙羅も分かる。分かるからこそ、苦しい。そもそもこの世界では世界移動の技術が進んでいるとはいえ、ゲートを放置はできず、"あっちの世界"から帰るゲートはいつ開くか分からないのだから・・・だから、幼なじみで以心伝心な沙羅と俊弥は目を見合わせて頷く。



「パパ(ママ)も一緒に行く」


そんだけ知り合いが転生している世界ならもしかしたら美奈だって、茜達だっているかもしれないから・・・と。和也はダメだと言おうとしたが、両親の気迫に押されそのまま自宅から直通の秘密地下通路を通って親子3人、横須賀、猿島につくられているセカケンの秘密施設へ向かった。



















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