再会



 1934年 6月


 前世で人生の最後を迎えた時から116年前、といってもその同一世界線の過去というわけではなく、別世界線のこの時代の日本に前世と同じ海軍軍人として転生した林実咲は、転生の話も信じてくれた面白い物好きな上官に見せられた新聞記事で同じくこの世界に転生した仲間達を見つけ、東京まで会いに来た。その仲間は前世では実咲と同じ海軍軍人であったが、この世界では政治家となっていた。


「あの実咲がまさか交通事故死して転生なんてね」


「弦さんが後追いしてないといいけど」


 実咲の転生の経緯を聞き、驚きの顔を隠せない仲間達。前世に残してきた夫の名前を出されると、実咲も少し沈んでしまう。


「まあ、あんたらば死地に追いやったバチが当たったんだろね」


「何言いよっとや、私も菜生もお前ん事そぎゃん風に思た事なんかにゃあけん、そらある意味自惚れだろ」


「そうよ実咲、あんたも沙羅も私達は恨んどらんし、また会えて嬉しいしかないよ」


「真紘、菜生・・・」


「「相変わらずの泣き虫提督ね、お前は」」


 そして、その顔を見て菜生も真紘も目の前にいる実咲があの前世にいた実咲だと確信していた。


「それで、霊魂管理局の神さんからアメリーも來夢も秋乃もまっちゃんも皆、この世界に転生しとるて聞いたけど、皆の居場所とか2人ともわかる?」


「うん、皆はまた実咲と一緒で海軍軍人になってるみたい、所属は秋乃が舞鶴でまっちゃんが室蘭とか言ってたかな、この世界だとまっちゃんも女よ。アメリーが佐世保にいてね、あの人はこの世界じゃ日本生まれ日本育ちだって。名前も天麗って漢字だった」


「そっか・・・でもなんで皆この世界に?最初に来たのは偶然だとしても、皆戦死した時期も違うし、皆が皆私みたいに後追ってくるのも・・・この世界で私達が何かするべき事があるんじゃないの?」


 菜生と2人して顔を見合わせて、やっぱ実咲らしいねと苦笑いして、その疑問に答える真紘。


「何をすべきかなんて分からんけど・・・さしより今分かっとる事で言えば、前世の同じ時期の帝国とそう変わらんみたいだけどね、女系社会に違和感があるくらいで」


「そっか・・前世にあったイギリスとロシアとの同盟はあるの?」


「イギリスは変わらず同盟国みたいね。ロシアとは前世同様日露戦争後に協商結んで・・・ただこの世界だと先の欧州大戦中に革命が起きてロマノフ朝が滅亡して今はソビエトっていう社会主義国の連邦になってるみたい」


「そっか、ロマノフ家が滅亡・・・だったら、この世界の欧州大戦は、私達の知る前世と同じ結果じゃないんだろうね」


「うん、前世同様、協商側は勝つには勝ったけど、特にフランスなんかは最終的に勝てたとはいえ前世以上に消耗して・・・帝国も前世同様開戦からしばらくは中立を保って、海軍がドイツ東洋艦隊を牽制するくらいだったんだけど、やっぱり欧州の主戦場が泥沼化してくると、参戦してくれって要請が来て参戦、最終的に戦勝国になったのは前世と一緒ね」


 ここから先は、菜生が代わって説明する。


「それで前世のパリ講和会議は私達協商側の余裕勝ちて結果だったけど、真紘の言葉通りフランスもイギリスも戦勝国側の消耗が激しくてね」


「ドイツ領内、ルールとかバイエルン方面から独国領内への反攻作戦はこの世界じゃされなかったの?」


「されなかったていうか、それができなかったのよ。英仏連合軍はヴェルダンで一時壊滅寸前に陥ったし、植民地から徴兵しまくってなんとか戦線維持して・・・帝国が参戦したところで海外派遣できる戦力なんか限られてるでしょ?」


「そうだけど・・・アメリカは?参戦せんかったん?」


「それがね、この世界ではルシタニア号事件もツィンメルマン電報事件もなかったしアメリカは基本的には中立のままで、ドイツもオーストリアもトルコも革命で自滅しただけで・・・パリで結ばれた講和内容も結局痛み分けみたいになってね、どの国もそうだけど帝国もイギリスに巻き込まれて少なくない将兵の犠牲払って結局何も得るものはなかったの、戦勝国たってドイツ、オーストリア、トルコ、ロシアで連続して起きた革命のいざこざで消去法的に決まったものだしね」


「前世で貰ったマーシャルとか南洋の旧ドイツ領も?」


「それも講和仲介したアメリカの一声で原状回復にされちゃって独領ニューギニアと呼ばれたままよ、無論中国の青島なんかもね、結局得をしたのは犠牲出さずに武器輸出なんかで儲けたアメリカだけ」


「それじゃあ参戦はしてないけどアメリカの一人勝ちみたいなもんね・・・」


 そして戦後、前世のように国際連盟のようなものが設立される事もなく、米独が接近、この世界は現在その米独協商と日英同盟との二極構造になっているという。


「戦後に米独が結んだのはどういう理由で?」


「勿論、英国とその同盟国の我が国を意識してよ。日英両国は未だドイツへの警戒感を緩めてないし、そのドイツとアメリカが結んだって事はつまりそういう事」


「日英を分断する策略か・・・」


「そう、アメリカからしたら何かと口うるさい旧宗主国様とそれにべったりな日本の同盟は、自国が更なる覇権拡大を狙う上で邪魔でしかないからね、日英は新大陸を挟む形だし」


 とはいえ、この世界の日本は前世の同時期より国力的には弱いだろうし、英国も先の大戦でやはり経済的に消耗しているはずだし、米国が無駄に警戒するような事はないんじゃないかと疑問をぶつける実咲。


「普通に考えりゃそうなんだけどね・・・・・・」


 この世界の情勢は複雑なのよ・・・と難しい顔をする菜生と真紘。そして彼女達が個人的に各国に派遣しているスパイ、通称忍者からの情報を纏めたものを見せられた実咲は・・・・・・



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る