魔人娘の交流記録
プレーナ
第1話 夢を持つ蛮族
ここはクレメリア大陸と呼ばれる場所のゴヤという街。
私はこの街にある『樫の揺籃』というギルドに所属している
スーピアといいます。
私はいわゆる訳ありの存在なのですが、今ではここに受け入れられて日々を過ごしています。
これは私がこのギルドに加入して、その先の夢を叶えるためにやってきたことの話。
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この大陸には大きくわけて人族と呼ばれる種族と蛮族と呼ばれる種族がいてこの2種族は基本的に敵対していて争いが無くなることは無いのが現状です。
私はその中でも蛮族に分類されるディアボロという種族で人族からは上位蛮族と呼ばれるものになります。
蛮族という種族は魂に根付いた影響から人族と敵対することが多く、各地で問題を起こすことがあり酷い場合は討伐依頼などが出されることもあります。
あくまで『多くの』であって例外も存在していて、私はその例外寄りの存在ですね。
私は人族に対して敵意や害意というものが極端に薄いため争うより仲良くしたいと思っています。
だけど、現実はそんなに甘いものではなく人族からするとディアボロという種族自体が脅威であり、いくらこちらに敵意が無いと言っても簡単に信じて貰えない。
油断すると簡単に命を落とすような世界だからそれも仕方がないことだとはわかっているけど冷たくされるのはやっぱり辛いんですよね。
人族に警戒されてしまう理由の1つとして見た目が人族と
見た目が異なることですね。
私の見た目は金髪に金の瞳、肌の色がまだ人族の大半の人族と近かったのがせめてもの救いなのですが頭に大きな紅い角や身体に黒い棘があり、黒い宝石のような物体が体のあちこちにあります。
それらを隠せばまだ何とかごまかせるかも知れませんが正直隠し続けるのは無理があります。
ただ、ひとえに人族といっても獣人や竜人のような種族もいるため見た目だけが理由ではないんですよね。
では何が違うのかというと魂に”穢れ”というものが無いまたは少ないか多いかという点です。
”穢れ”というのは死者の魂は輪廻の輪に帰るという世界の法則があり、蘇生などによってこの流れに逆らった場合に蓄積されてしまう…というものらしいのですがこれが溜まりきってしまうと死霊やアンデッドとなってしまいます。
要は、魂の”穢れ”が高いものほど魔物に近く、世界を作った神様に仇なす存在という風に扱われます。
私の種族はこの”穢れ”が生まれながらにかなり溜まった状態であるため同族が戦死した後アンデッドになってしまい葬るしかなかったという事例もあります。
……私の種族が別になにかをした訳じゃないんですけどそういうものなのでどうしようもないのが現実です。
実際、私の身体は人族よりも強靭で何より悪魔のような見た目に変身することも可能なのでますます信じろという方が難しいという踏んだり蹴ったりな状態なんですよね……。
種族というと私にも一応家族と呼べるものはいて、両親と兄に弟がいます。
ですが父親と兄弟は人族や他の蛮族よりも自分達は優れており支配するものだという考え方で私はあまり好きじゃありませんでした。
まぁ、ディアボロという種族はいわゆる上位蛮族なのでそういった考えは普通で私みたいに友好を望む方が少数派で変なだけなんですよね。
この家では跡継ぎとなる者を決めるために日々戦闘訓練を繰り返しているのですが私はあまり気乗りしないため最低限度しかこなしていません。
そんなことをしていれば当然、父親が私に目をかけることはなく兄弟の育成に集中します。
考え方が違って居心地が悪いので私はいつかこの家を出て独り立ちしたいと思っていたのだけどその時の私はまだ小さく、とてもこの世界で1人で生きていくことはできないのはわかっていたため我慢していました。
でも、そんな日々から抜け出すきっかけがありました。
父親や兄弟、その部下達が時折外に出て捕虜として人族を連れてくることもあり、そうした人達が住む場所にたまたま立ち寄った際に話しかけられたことです。
『彼』が言うには、人族の領土では時期や何か祝い事があると『お祭り』というものを開きその時だけ普段は見ないような店や料理等が出るという。
その人もそういう店を開いたことがあるらしく、
飴を熱や鋏で素早く加工して魚や花など色々な形を作る飴細工というものを売っていたらしい。
話だけではどういうものなのか全然分からなかったため
言われた材料をこっそりと持ち出し『彼』に実際にやっている姿を見せてもらった。
最初はただの棒に刺さった飴だったものが回したり切ったりするとたちまち形を変えてしまったことにものすごく感動してしまっんですよね。
それから私は飴細工っていうものに凄く興味が湧いちゃって真似をしてみたんだけどこれが凄く難しくて花を作ってるつもりがぐちゃぐちゃになってしまいました。
『彼』に私の初めての作品を見せたら何故か凄く嬉しそうにしていて理由を聞くと人族でも興味を持つものは少ないのにまさか蛮族である私に良さが伝わるとは思わなかったんだとか。
『彼』の名前を聞こうと思ったけど、自分はあくまで捕虜でいずれ殺されてしまう運命だから知らなくていいと結局最期まで教えてくれませんでした。
代わりに『彼』が使っている飴細工用のハサミを渡されて、それは今も私の宝物になっています。
戦闘訓練とは関係ない趣味を見つけた私に対して父親はすっかり興味を無くし、兄弟達は見下して来るようになりましたが正直どうでもよかったので気になりませんでした。
なぜなら、母親と『彼』だけは褒めてくれたのが凄く嬉しかったからです。
日々の退屈な訓練をさっさと終わらせて『彼』の元に行ったり隙あらば飴細工の練習したりとのめり込む趣味になりました。
いつか自分も飴細工の職人になってお店を持って、芸を披露して私が初めて見た時みたいに人族とか蛮族とか関係なく喜んで貰えたらいいなと思うようになりました。
そうしてか『彼』の元に通うようになり数年がすぎたんだけど、私に飴細工を教えてくれた『彼』はいつの間にかいなくなってしまった。
……必死で探し回った末に『彼』は無惨な姿で見つかった。
周りと違って好戦的じゃないだけで私も一応はディアボロだから戦う力は十分にあるし、
日々やっていた戦闘訓練も嫌がらせのつもりで負荷を上げられるイタズラを兄弟達から受けていたのが影響したせいか跡継ぎの最有力候補に上げられていたことが兄弟達からの不平不満を募らせ、腹いせに手を出したらしい。
このときくらいじゃないかな。私が本気で怒ったのは。
変わり果てたその人の前でじっと動かずにいた私に向けてムカつくだの気に食わないだの好き放題言って嗤っていた愚兄に蹴りを入れました。
私の蹴りは自慢じゃないですが鉄製の扉だって吹き飛ばせます。
そんな一撃を不意にもらった愚兄はその一発で再起不能、愚弟も腰を抜かして怯えていました。
愚弟を冷めた目で一瞥して父親の元に向かいました。
普段私に一切関心を示さない父親がこんな時ばかり褒めて来たのですが、『彼』を侮辱する発言を多々放ち、教えてもらった飴細工についてくだらないことと言ったことで
私の怒りは頂点を超えたためその場で父親に絶縁宣言をしました。
当然、私の気持ちが理解できない父親は意味がわからないと怒り、力ずくで従わせようとしてきたので応戦し文字通り一蹴。ディアボロという種族が持つ魔人化という変身する奥の手を使う余裕すら与えずに叩きのめしました。
出ていく決心がついた私はすぐに荷物を纏めていました。
その最中に母親が父や兄弟達を止められなかったことを謝ってきて、私が普通のディアボロと違って自分ではなく他人の為に怒り力を振るったことを褒めて、これからもそうするようにと言ってきました。
私も兄弟達にや父親に言われたこと、されたことが許せなかったので出ていく意志をはっきり伝え、『彼』から教わり、母が褒めてくれた飴細工で種族関係なく笑えるような店を作りたいという夢を語りました。
母はそんな私を意志や夢を尊重して応援すると言い、この先1人で生きていく上で必要になる衣服やお金など最低限の補助はしてあげると言って色々と用意してくれました。
そうして家を出た私はこの大陸内で蛮族である私でも受け入れてくれるような土地はあるのかを探すところから始まり、道中で出会った別な蛮族達に話を聞いたりするうちにゴヤという街であればどんな種族も住むことができると聞いてそこを目指すようにしました。
私はかなり幸運だったみたいで家を出て最初の方で昔家同士の付き合いがあって仲が良かったシェーネという蛮族の友達と数年ぶりに偶然出会い、一緒に行動するようになったからです。
彼女の話についてはまた別な機会にしますが頭が良くて妖精に好かれるいい娘なんですよ?
最初に言ったようにこの大陸は人族が大半の土地や街を支配しています
人族の作った街では私のような上位蛮族や魔物は入るだけで身を焼かれるような苦痛におそわれてまともに活動することができない程の強い結界が張られており、情報を得たり買い物など取引を行うのも難しいため生活するだけでも一苦労です。
ですが、シェーネ達のような一部の種族は蛮族でありながら街に入ることが出来るため情報収集ができたり、彼女の依頼を手伝うことで生計を立てたりもできたので本当に助かっちゃいました。
……1回だけ彼女の所属してる組織の仕事に代理で参加させてもらったときに結構酷い扱いだったのでもっと自分を大切にした方がいいよとだけ提案させてもらったんだけど
まぁ、彼女にも事情があるらしいのであまりとやかくは言わないことにしました。
ここまでが私が夢を持って旅に出たきっかけですね。
次の機会にはシェーネと出会ってからの話や旅の途中で出会えた人の話でもしようかな。
魔人娘の交流記録 プレーナ @Pleana
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