第2話 文学少女?

 高校生活が始まり一週間が過ぎた。俺は三つ編みで眼鏡の文学少女っぽい小峯佳奈子に声を掛け……なんてことは出来ず、最初の挨拶以来、全く話せていない。話すきっかけも無いし、その勇気も無かった。言い訳かも知れないが、高校生活に慣れるのに精一杯だったのだ。きっとそれは小峯さんも同じだろう。


 しかし、俺は暇さえあれば小峯さんのことを良く見ていた。それによっていろいろ分かったことがある。第一に小峯さんは友達が少ない。いや、居ないのかもしれない。他の女子と話すのも最小限という感じだ。もちろん、男子と話すところは見たことが無い。お昼はいつも一人で食べている。コミュニケーションは苦手なのかも知れない。


 第二にやはり小峯さんは本好きだ。休み時間にはスマホを見ているか、本を読んでいるか、どちらかだ。どういう本なのかは分からないが。


 ここまで観察した限りでは、小峯さんは俺の理想の三つ編み眼鏡文学少女なのかもしれない。そういう思いが日々強まってきていた。


「ふうん、それで、どうするんだ?」


 体育の授業の休憩中、俺の「小峯さん観察報告」を聞いた高平は言った。


「何が?」


「何がって、声かけるなり、告白するなり、するんだろ?」


「な!? そんなこと、俺には出来そうも無いし……」


「マジかよ……滅多に居ないタイプなんだろ。これ逃したらもうチャンス無いかもしれないぞ」


「そうだけど、もう少し仲良くなってから……」


「声かけずにどうやって仲良くなるんだよ」


「それは……偶然の何かで……」


「そんなの待ってたら高校生活すぐ終わるぞ、まったく……仕方ねえな。俺が何とかしてやる」


「お、お前勝手なことするなよ」


「まあ、まかせておけ」


 高平はちょっと強引なところがあるし、何をするのか心配だ。だけど、このままでは何も動きが無いことは確かだった。高平に任せてみるか……


◇◇◇


 放課後、俺と木山が帰ろうとするのを高平が呼び止めた。そして、高平は小峯さんのところに行き、言った。


「小峯さん、今日俺たちと一緒に帰らないか?」


「え!?」


 小峯さんが驚いている。


「お、お前……小峯さんに迷惑だろ」


 慌てて俺は言った。


「め、迷惑じゃ無いよ」


「そうか。じゃあ、行こうぜ。木山と川端も一緒だから」


「う、うん……」


 こうして俺たちは小峯さんと一緒に帰ることになった。


◇◇◇


 校舎を出て校門までの道を歩いていくと、高平が言い出す。


「実は川端が小峯さんに勝手なイメージ持ってて……」


「え、何?」


 小峯さんが俺を見た。


「あ、それは……」


 俺が言えずに居ると木山が言い出した。


「眼鏡で三つ編みだし、文学少女なんじゃないかって」


「あー、そういうことか」


 小峯さんは少し笑顔になって言った。


「ごめんね、川端君。私、文学少女じゃ無いよ」


 あれ、そうだったのか……


「うわ、川端、もうフラれたか」


「なんでフラれたことになるんだよ」


 少しショックではあったけどな。


「小峯さん、ごめんね、勝手なイメージを押しつけて」


 俺は謝った。


「ううん、よく言われるし。この格好だからね」


「でも、本よく読んでるよね?」


「あー、あれはラノベだし」


「そうなんだ」


「うん、私は本読むよりアニメが好きだから」


「え、そうなの?」


 俺もアニメは好きだ。


「うん、文学少女じゃなくてオタク少女だよ。BLも好きだし」


 ふ、腐女子だったのか……


「あ、イメージ壊しちゃった?」


「ちょっとね……」


 清純な文学少女のイメージが吹っ飛んだ。


「アハハ、ごめんごめん。高校で大人しくしすぎちゃってたかな。私、ほんとは騒ぐタイプだし、大人しい感じじゃ無いんだ」


「そ、そうなんだ……」


「いや、俺も意外だったな」


 高平が言う。


「別に騙してるわけじゃ無いんだけどね。人見知りだから。知らない子ばっかりで怖じ気づいちゃって」


「わかる。俺も友達といえるのはこの2人ぐらいだし」


 俺は言った。


「でもいいじゃん、2人も居て。私なんて未だに友達ゼロでどうしようかってちょっと悩んでた」


「そうだったんだ……」


「じゃあ、俺たちと友達になれば? ちょっとマックでも行かね?」


 高平が誘う。小峯さんはそんな軽い誘いにならないだろ。


「いいね! 行こう行こう!」


 小峯さんは嬉しそうに言った。た、確かにイメージとは違ったわ……でも、これはこれで可愛いけど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る