いつまでも天使
いすみ 静江
羽
天使を信じますか。
そもそも天使を見る機会は少ないと思います。
天使のお姿は、教会などでお話などを伝えるために壁や戸にステンドグラスと綺麗に描かれています。
数々の名画に描かれてもおりますし、欧州を旅した際にも取り外せない建築部分に美しさを感じたものです。
でも、芸術だと前置きをしていたせいか、直ぐそこに羽をまとった天使がいるとは思いませんでした。
私が初めて世の中にあるものだと思ったのは、運命的なものです。
忘れたい辛いことがありました。
哀しさの中で、ペットを可愛がることが癒しとなっていました。
しかし、同居する家族とは折が合わなかったのですが。
動物が好きで、いつも傍にいてくれるうさぎなどと一緒に過ごしていましたが、幾つかの別れもありました。
うさぎは長生きしてくれても「十年」が限界です。
看取る覚悟を毅然としなければなりません。
うさぎは「羽」で数えて食べていいものだと解釈した歴史があります。
私はうさぎはいただかなかったのですが、生きているので殺生はあります。
様々な経緯を経て、二人の子どもに恵まれました。
結婚して十年は過ぎておりました。
長男のとき、元気な産声が聞こえました。
雲雀の澄んだ声みたいでした。
羽は見えないけれど、きっと愛らしい天使のようです。
ちいさな腕にバーコードを二つにしてつけたら、保育器で運ばれていきました。
お母さんより先に手術室を出たのです。
パパの傍を執刀医が通る際、「お母さんは大丈夫ですよ」と仰っていたようです。
長女のとき、直ぐに産声が届かず、私が瞳孔を開き気味でしたが、間もなく初めて呼吸をしてくれました。
お父さんにも羽が見えたのかな。
長男は美味しいオレンジジュースを買ってもらってベビーカーをカタコトと押して楽しそうにしていました。
妹が産着でくると、高くて見えないからとお父さんに抱っこされて、「よしよし」と撫でていました。
長男の妹好きはもう始まっていたのです。
長男の名前は、二人から一文字ずつ命名したのです。
長女のときは、お父さんが考えました。
冷静なお父さんが静江の気が変わらない内にと区役所へ届けにいってしまい、ちょっと寂しかったです。
翌、天使の羽が沢山眠っている新生児室に許可をもらって、命名を書にして飾っていきました。
ナースセンターでは、どう読むのかなとざわついたようです。
いま、ペットはいません。
本当は一緒にいたいけれど、どこにもいません。
しかし、可愛い天使は人間の姿となりました。
上手くいかないこともあります。
私がおかしいようです。
子どもが熱を出したのご飯を食べないだの寝付きが悪いだのを繰り返している内、小学校で「十歳」を成人式の半分と捉えて行事がありました。
それから、長男はこの春から仕事に就きます。
スーツも揃えてやれない程の収入ですが、入社の前になんとか用立てるしかありません。
私は借りるのに非課税な人なので、夫が奔走してくれております。
いつまでも子ども達は、「パパ」、「ママ」と呼んでくれます。
なにもできなかったけれども、一体どう食べさせたら大きくなったのかと自分でも思うくらい、各々が育ってくれました。
辛いことはそれぞれあり、天使の羽ももがれましたが。
それでも、繰り返し踏ん張ることで前を向いている子ども達の姿勢は、私なりにいつでも受け入れられるようにしていたいです。
夫は私より若くても仕事がきついのか、老いを口にします。
家には長女がまだおりますが、長男が旅立つのを寂しく思っています。
小さかったあの羽を大きく羽ばたいて、新しい戸を開ける応援をしたいです。
【了】
いつまでも天使 いすみ 静江 @uhi_cna
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