【ねこどす!】『名探偵ねこどす』

だみんちゃん

第一話「消えたファミチキの謎」

レディム帝国の集会室は、夕暮れ時の柔らかな光に包まれていた。

大きな窓から差し込む夕陽が、部屋全体を温かなオレンジ色に染めている。


お気に入りのハンモックでゆらゆらと揺られながら、

名探偵ねこどすは気持ちよさそうに居眠りに耽っていた。


普段なら、お隣さんからのおすそ分けの食事の香りで目覚める時間帯だが、

この日は違った。突然の悲鳴が静寂を破ったのである。


「あああっ!私の大切なファミチキがないの!」


獣人の少女レディムの声に、ねこどすは目を覚ました。

ハンモックから首だけを持ち上げ、状況を確認する。

レディムが真っ青な顔でテーブルの前に立ち尽くしている。


「どしたニャ?」ねこどすは、ゆっくりとハンモックから身を起こしながら尋ねた。

その仕草は、まるで麻雀の勝負の場で手札を見るような慎重さがあった。


「さっきまでここに置いてあったファミチキが消えちゃったの!」

レディムは震える手で空っぽのテーブルを指さした。

「私、このファミチキを今日の集会のために特別に買ってきたのに...」


集会室には他に、いつものメンバーがいた。

本を読んでいたミリッツさん、スマートフォンを操作していたしくらいさん、

そしてソファでくつろいでいただみんちゃん。

部屋の隅には、いつものように静かにBirdが佇んでいる。


「ふむ」

ねこどすは、テーブルに近づきながら状況を分析し始めた。

「事件発生の時刻はいつニャ?」


「えっと...15分前くらいかな。確かにここに置いてあったの!」

レディムは必死に説明する。

「ちょっとだけ席を外して、戻ってきたらなくなってたの」


ねこどすは、麻雀で役を読むように周囲を見渡した。

「みなさん、その15分の間、何をしていたか話してもらおうかニャ」


ミリッツさんが最初に話し始めた。

「私は『推理小説の書き方』という本を読んでいました。ちょうどクライマックスシーンのところで...」


「私はTwitterでフォロワーさんとお話ししてました!」

しくらいさんは、スマートフォンの画面を見せながら説明した。


だみんちゃんは少し恥ずかしそうに

「私、実はうとうとしてました...」と白状した。


「なるほどニャ...」

ねこどすは、探偵のように部屋を歩き回りながら、細かな手がかりを探し始めた。

そして、いくつかの重要な証拠を発見する。


まず、テーブルの上には、わずかながら油の跡が残っていた。

次に、床には小さな衣の粉が散らばっている。

そして最も決定的な証拠として、部屋の隅、Birdの近くに落ちていた小さな骨。


「みなさん、犯人はもう分かったニャ」

ねこどすは、勝負師のような自信に満ちた表情で宣言した。

その目は、まるで麻雀で役満を和了った時のように輝いていた。


全員の視線が集まる中、ねこどすはゆっくりと部屋の隅を指さした。

そこにいたBirdが、突然モジモジし始めた。


「Bird、君だったんだニャ。証拠は三つある」

ねこどすは、まるで麻雀の役を説明するように話し始めた。


「一つ目は床に落ちている衣の粉。これはファミチキの衣で間違いないニャ。二つ目はテーブルの油の跡。これは誰かが慌てて食べた証拠。そして決定的な証拠が、君の足元に落ちている骨ニャ」


Birdは観念したように頷いた。

実は、レディムがちょっと席を外した隙に、香ばしい匂いに誘われて我慢できなくなってしまったのだ。

最初は少しだけつまむつもりが、気づいたら完食してしまっていた。


「まったく、欲望に負けるとはニャ...」

ねこどすは溜息をつきながらも、どこか楽しそうだった。

「でも、その気持ちは分からないでもないニャ。私だってお隣さんのおすそ分けには目がないしニャ」


レディムは最初こそ悲しそうな表情を浮かべていたが、

次第に笑顔に変わっていった。

「まあ、そんなに美味しそうに食べられちゃったんなら、許しちゃおうかな。でも次からは一緒に食べようね!」


事件は思いがけない形で解決し、再び平和が戻った集会室。

ねこどすは再びお気に入りのハンモックに戻り、

ゆらゆらと揺られながら、次なる事件の到来を待つのだった。


外では夕日が沈みかけ、部屋の中は優しい夕暮れの光に包まれている。

ねこどすは、今日もまた一つ、レディム帝国の平和を守ることができた満足感に浸りながら、うとうとし始めた。


...そう、名探偵ねこどすの日常は、いつも予想外の展開と、

ちょっとした優しさで満ちているのだ。


そして、これからも続くであろう不思議な事件の数々を、

彼は今日も麻雀を打つような冷静さと、

ハンモックでくつろぐような温かさで解決していくに違いない。

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